試合の日、僕が選手に言っていることは2つだけです。
揚げ物・油の多いもの・生ものは食うな。炭水化物はしっかり食え。
理由も含めて書きます。これは好みの問題ではなく、根拠のある話です。 実際に、たった一度の食事で試合に来られなくなった選手を見てきました。
結論:試合前の食事は「消化」と「安全」で決める
試合前に何を食べるかを決める基準は、栄養バランスではありません。
| 基準 | 意味 |
|---|---|
| ① 消化にいいか | 胃に残っていると動けない |
| ② 安全か | 当たったら、その日は終わり |
| ③ エネルギーになるか | =炭水化物 |
この3つで、食べるものはほぼ決まります。
食べさせないもの
① 揚げ物・油の多いもの
脂質は、胃に長く残ります。消化に時間がかかるからです。
試合の3時間前にトンカツを食べた選手は、キックオフの時点でまだ消化しています。体は「消化」と「運動」を同時にやることになり、どちらも中途半端になります。
国立スポーツ科学センター(JISS)も、試合前は 「揚げ物や脂質の多い食品(肉の脂身、脂の多い魚、ドレッシング、マヨネーズなど)は控える」としています (JISS 成長期アスリートハンドブック)。
見落としやすいもの
揚げ物だけではありません。ドレッシング、マヨネーズ、肉の脂身、脂の多い魚も同じです。
「サラダだから大丈夫」と思ってマヨネーズをかけたら、意味がなくなります。
② 生もの
これがいちばん怖いです。
JISSは、試合前に避けるものとして「刺身(カキやアサリなどの貝類やカニなども)や生卵などの生もの、生焼けの肉」、 そして「調理してから時間がたった料理、保存状態が悪い料理」を挙げています。
理由は単純で、当たったら試合どころではないからです。しかも試合前は体が緊張していて、普段より弱っています。
JISSはこう書いています。
緊張すると消化吸収能力が抑制される可能性があり、便秘や下痢などの胃腸系の障害が見られます。
つまり、普段なら平気なものでも、試合前は当たりやすい。確率を下げる以外にやることはありません。
現役トレーナーの視点実際にあった話です。試合の2〜3日前に、半生の肉を食べた選手がいました。
試合当日の朝、お腹が痛すぎて会場に来られませんでした。その選手はスタメンでした。
急きょ別の選手が入り、メンバー外だった選手も、その日から準備をやり直すことになりました。
本人の評価が落ちるのはもちろんです。でもそれ以上に、周りの選手とチーム全体の予定を巻き込みます。 「自分が我慢すればいい」という話ではありません。
この例で大事なのは、食べたのが試合当日でも前日でもなく、2〜3日前だったことです。
食あたりは、その場では起きません。数日たってから出ます。だから「明日試合だから今日は気をつけよう」では遅いことがあります。 試合週に入ったら、生ものは食べない。そのくらいの幅で考えてください。
③ 食べ慣れないもの
遠征先で「せっかくだから名物を」——これが失敗のもとです。
JISSも「食べなれない食品や料理、調理法は避け、消化のよい食べなれた食事を中心に」としています。
試合の日に冒険する理由はありません。いつもと同じものを食べてください。
もう1つ、盲点になりやすいもの
JISSは「食物繊維が多くガスを発生させやすい食品(そば、さつまいも、モロヘイヤ、ごぼう、えのき、ひじきなど)はとりすぎない」としています。
体にいいものだからと、試合前に大量に食べると、お腹が張ります。
意識して食べるもの=炭水化物
逆に、これだけは絶対に食べてほしいというのが炭水化物です。
これがないと動けません。体を動かすエネルギーが、そのまま足りなくなります。
JISSも、試合前のポイントとして「体内にエネルギーを蓄えておくために、炭水化物(ご飯、もち、パン、麺類)を中心とした食事にする」と明記しています。
現役トレーナーの視点試合前に緊張して食べられへん、という選手はけっこういます。
そのときも「おかずは残してもええから、ご飯だけは食え」と言います。
食べる量を減らすんやなくて、減らす順番を間違えんこと。最後まで残すのが炭水化物です。
いつ食べるか
タイミングには目安があります。ACSM(米国スポーツ医学会)・米国栄養士会・カナダ栄養士会の合同声明では、 試合の1〜4時間前に、体重1kgあたり1〜4gの炭水化物をとることが示されています。
| タイミング | 何を | 体重60kgの目安 |
|---|---|---|
| 3〜4時間前 | 普通の食事(ご飯中心・脂質少なめ) | 炭水化物 180〜240g |
| 1〜2時間前 | おにぎり・バナナ・カステラなど軽いもの | 炭水化物 60〜120g |
| 直前(30分前など) | ゼリー飲料・バナナ。固形物は入れない | — |
時間が近いほど、量を減らして、消化の早いものにする。この考え方だけ覚えておけば応用が効きます。
試合が終わったあと
試合後は、「何を食べるか」より「いつ食べるか」のほうが大事です。
JISSも「トレーニング後速やかに栄養補給する」ことを重要としています。使い切ったエネルギーを戻すのに、早いほうが有利だからです。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 終了後できるだけ早く | おにぎり・バナナ・牛乳など。炭水化物+たんぱく質を一緒に |
| 帰宅後の食事 | いつもの「5つそろえる」食事に戻す |
ここで初めて、揚げ物を食べてもかまいません。制限があるのは試合前だけです。
JISSは「トレーニング後の補食は夕食に支障をきたさない程度に」とも書いています。 帰りにガッツリ食べて夕飯が入らない、では意味がありません。つなぎとして食べるのが補食です。
まとめ
- 試合前に食べないもの:揚げ物・油の多いもの(ドレッシングやマヨネーズも)/生もの/食べ慣れないもの
- 理由は「消化に時間がかかる」「当たったら終わり」の2つ
- 生ものは試合週に入ったら食べない。食あたりは数日後に出るので、2〜3日前でも間に合わない
- 体調を崩すと自分の評価だけでなく、チーム全体の準備を巻き込む
- 緊張すると消化吸収能力が落ちる。普段なら平気なものでも試合前は当たりやすい
- 意識して食べるのは炭水化物。これがないと動けない
- 食べられない日も「おかずは残してもいいから、ご飯は食べる」
- 目安は試合1〜4時間前に体重×1〜4gの炭水化物。近いほど少なく、消化の早いものに
- 試合後はできるだけ早く。炭水化物とたんぱく質を一緒に
毎日の食事の基本は サッカー選手の食事の基本、 試合前日の過ごし方は 試合前日のコンディショニング、 試合翌日の回復は 試合翌日の過ごし方 にまとめています。 試合中に足がつる人は 足がつる原因と対策 もあわせてどうぞ。
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出典
- 国立スポーツ科学センター(JISS)「成長期アスリートのためのハンドブック」 — 試合前・調整期の食事(安全性、脂質、炭水化物中心、食物繊維)、トレーニング後の補食
- JISS「アスリートの食事の基本」 — 基本的な食事の形
- Thomas DT, Erdman KA, Burke LM.「Nutrition and Athletic Performance」ACSM/米国栄養士会/カナダ栄養士会 合同声明, 2016 — 試合前の炭水化物摂取量とタイミング
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・管理栄養士による個別の指導に代わるものではありません。必要な量やタイミングには個人差があり、紹介した数値はあくまで目安です。食物アレルギーのある方、持病のある方、体重管理が必要な方は、必ず専門家にご相談ください。