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現役トレーナー・S.T.R鍼灸院 院長

サッカーの現場でトレーナーとして活動する鍼灸師。学生からプロまで、怪我・リハビリ・コンディショニングの現場対応を専門にしています。

「当たり負けするんです」——現場でよく受ける相談です。そしてたいてい、こう続きます。「体幹が弱いんですかね?」

でも実は、僕がその相談を受けたときにまず見るのは、体幹の種目ではありません。スクワットがきちんとできているか、そしてどれくらいの重さを扱えているか。まずそこを見ます。理由を、この記事で説明します。

体幹の役割は「力を伝えること」

まず、体幹の目的を整理しましょう。腹筋を割ることでも、プランクを長く保つことでもありません。体幹の本当の役割は、力を漏らさずに伝えることです。

走る、蹴る、当たる——これらの力は、もとをたどれば地面を押した力から生まれます。その力は脚から体を通って、上半身や足先へ伝わっていく。このとき胴体(体幹)がグニャッと崩れると、せっかく生み出した力が途中で逃げてしまいます。

体幹はエンジンではなく、パイプです。脚というエンジンで生んだ力を、漏らさず相手や地面に伝えるための通り道。だからパイプが細くて弱いと、エンジンをいくら強くしても出力が届きません。逆にいえば、パイプだけ立派でも、エンジンがなければ流すものがない——これが冒頭の「まずスクワットを見る」理由です。

【重要】プランクだけでは、競技に転移しにくい

ここは正直にお伝えします。研究では、体幹の安定性トレーニングを単独で行っても、競技のパフォーマンス向上にはつながりにくいことが繰り返し示されています。長時間のプランクや、特別な体幹種目そのものが競技力を上げるという証拠は、実は乏しいのです。

理由は「動きが違うから」。プランクは止まった姿勢で耐える運動です。一方、試合中の当たりは、走りながら、押されながら、ねじられながら耐えるもの。止まって耐える練習は、動きながら耐える場面に転移しにくいのです。

⚙深掘りメモ:不安定な面でのトレーニングについて

バランスボールなど不安定な面の上で行うトレーニングは、「グラグラするほど体幹に効く」と思われがちです。ですが研究では、不安定な面でのトレーニングは安定した面に比べてパワーの出力がむしろ低下することが示されています。つまり"力を伝える"という観点では逆方向になりうる、ということです。

また、指導者や研究者への調査でも、腹圧を固めるだけの動作や、いわゆる腹筋運動(上体起こし)は「効果的ではない」側に評価されています。逆に、種目選びで最も重視されたのは「正しい動作パターン」、そして「競技で発生する力と同等以上の負荷」でした。

ただし「プランクは無意味」ではありません。姿勢を保つ基礎づくり、初心者の導入、怪我からの復帰過程、腰まわりの安定——こうした目的では十分に価値があります。問題は「そこで止まってしまうこと」。目的が"当たりに勝つ"なら、次の段階へ進む必要があります。

体幹トレーニングには段階がある

大事なのは「良い・悪い」ではなく「今どの段階にいるか」です。次のように積み上げていきます。

1基礎:姿勢を保つ・感覚を養う

プランク系、片脚でのバランス系。止まった状態で姿勢を保つ力と、体の位置を感じ取る感覚を養います。怪我の予防にも直結する土台の段階です。

2ねじれに耐える(入口)

デッドバグ、バードドッグ。仰向けや四つ這いの姿勢で、手足を動かしながら胴体をブレさせない練習。「手足が動く中で体幹を保つ」という、競技に一歩近づいた段階です。

3立って、外からの力に耐える

ここが当たり負け対策の本丸です。試合は立って当たるので、立位で外力に耐える練習が要ります。

・パロフプレス… ゴムチューブを横から引っ張った状態で、胸の前から前方へ押し出す。横向きの力にねじられまいと耐える種目。チューブ1本でできます
・スーツケースキャリー… 片手だけに重りを持って歩く。片側に引っ張られる体を、反対側の体幹が支える。「押されても倒れない」構図そのもので、当たり負け対策として特におすすめです
・ファーマーズウォーク… 両手に重りを持って姿勢を保ったまま歩く

4土台:立って行う全身の筋トレ

意外に思うかもしれませんが、スクワットやデッドリフトのような立位の複合種目こそ、最も強力な体幹トレーニングでもあります。重い負荷を体で支えながら動くため、胴体の安定筋が総動員されるからです。しかも同時に、力を生む"エンジン"そのものも鍛えられます。

現役トレーナーの視点

「当たり負けする」と相談されたとき、僕がまず確認するのはスクワットがきちんとできているか、どれくらいの重さを扱えているかです。ここが整っていないのに特別な体幹種目を足しても、変化は出にくい。
逆に言うと、基礎の筋力が上がるだけで当たりが変わる選手はけっこういます。体幹は"追加の飾り"ではなく、全身の力とセットで初めて機能するものだと考えてください。

正直に言うと、当たり負けは体幹だけの問題ではない

ここも誠実に書いておきます。当たりの強さは、いくつもの要素の組み合わせで決まります。

要素中身
全身の筋力力を生み出すエンジン。まずここ
体幹の安定性生んだ力を漏らさず伝えるパイプ
体格・体重物理的に、質量は当たりに影響する。成長期は特に個人差が大きい
当たる技術低く入る、体の向き、当たるタイミング、相手の力の受け流し方

このうち「当たる技術」は、指導者やコーチの領域です。同じ体格でも当たりが強い選手がいるのは、この部分が上手いから。体づくりだけで全部が解決するわけではない、というのは正直にお伝えしておきたいところです。

また体格については、成長期の選手は特に個人差が大きいので、他人と比べて焦らないこと。今すぐ体格で勝てなくても、技術と力の伝え方で戦える部分は必ずあります。

まとめ

  • 体幹の役割は腹筋を割ることではなく、力を漏らさず伝えること(エンジンではなくパイプ)
  • プランク単独では競技に転移しにくい。止まって耐える練習と、動きながら耐える場面は別物
  • 不安定な面でのトレーニングは、パワー出力が下がるという報告もある
  • ただしプランクやバランス系は基礎・怪我予防として価値がある。問題はそこで止まること
  • 段階は①基礎 → ②デッドバグ・バードドッグ → ③立位で耐える(パロフプレス・スーツケースキャリー)→ ④立位の複合種目
  • 当たり負けは筋力・体幹・体格・技術の組み合わせ。技術面はコーチの領域
  • 迷ったら、まずスクワットなどの基礎の筋力から

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筋力が足りないのか、力の伝わり方に問題があるのか、それとも体の使い方なのか——原因によって、やるべきことはまったく変わります。S.T.R鍼灸院では、体の状態や動きを見ながら、パフォーマンスを引き出すサポートをしています。お気軽にご相談ください。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、効果には個人差があります。トレーニングは自分の体力・年齢・成長段階に合わせ、無理のない範囲で行ってください。とくに高重量を扱う種目は、正しいフォームを指導できる人のもとで行ってください。