「オフって、休んでいいんですか」
毎年聞かれます。そしてだいたいの選手が、2つのうちどちらかに振り切れています。
最後まで何もせずに過ごすか、逆に不安で3日目からダッシュを始めるか。
先に結論だけ知りたい人へ
オフの期間を、3つに割ってください。
最初の1/3は、完全に休む。次の1/3で、徐々に動き出す。最後の1/3で、チームに戻れる状態まで上げる。
オフが2週間でも6週間でも、この割り方なら当てはまります。
前回、シーズン終盤に怪我が増える理由を書きました。今回はその先、シーズンが終わったあとの話です。
最初の1/3は、完全に休んでいい
ここは言い切ります。休んでください。
理由は、体だけの話ではありません。
10ヶ月近く、毎週試合があって、毎日練習があった。体が疲れているのは当然ですが、それ以上に頭が疲れています。
勝ち負け、メンバー入り、評価。ずっと気を張っている状態が続いていました。そこから一度、完全に降りる時間が要ります。
現場で見ていると、体の疲れより、頭の疲れのほうが抜けにくいです。体は数日寝れば軽くなりますが、「サッカーのことを考えない」状態を作るには、もう少しかかります。
だから最初の1/3は、トレーニングをしない時期にしてください。走らない、筋トレしない。寝る、食べる、サッカー以外のことをする。
ただし、ボールは触っていいです。ここは矛盾しているようですが、違います。
やめてほしいのは「トレーニング」であって「サッカー」ではありません。友達と遊びでボールを蹴るのは、むしろ頭の休養になります。メニューとしてやるのがダメ、という話です。
何が、どれくらいで落ちるか
「休んでいい」と言いましたが、落ちることは落ちます。そこは正直に数字を出します。
Clemente ら(2021, Sports Medicine)が、オフ期間の影響を調べた12の研究をまとめています。
| 測ったもの | どうなるか |
|---|---|
| 最大酸素摂取量(持久力の土台) | 大きく低下 |
| 体脂肪 | 増える |
完全に活動を止めた場合、酸素を使う能力が −3.4〜−21.2%と報告されています。幅が大きいのは、休んだ期間や元の状態が研究によって違うからです。
そして大事なのがここです。
オフ期に何かしらやっていた選手は、この落ち方がましになっていました。「完全に止めるか」「少しでも動くか」で、差が出ます。
だからこそ、完全休養は最初の1/3までにしておくという話になります。
落ちるものと、落ちないもの
ここは、知っておくと安心できるところです。
Joo(2018, PLoS One)が、選手に実際に2週間の完全休養をさせて、何が落ちたかを測りました。
| 測ったもの | 結果 |
|---|---|
| 間欠的な持久力(Yo-Yoテスト) | 有意に低下 |
| 繰り返しスプリントする力 | 有意に低下 |
| スプリントのタイム | 変化なし |
| アジリティ(切り返し) | 変化なし |
| 体組成 | 変化なし |
落ちたのは「繰り返す力」だけです。一本のスプリントの速さも、切り返しの鋭さも、2週間では落ちていません。
つまり、2週間休んでも「遅くなる」わけではありません。落ちるのは「何度も繰り返したときに、後半まで持つか」のほうです。
オフ明けに「足が重い」と感じるのは、たいていここです。速さが落ちたのではなく、2本目3本目が続かない。
休んだ以上に、戻すのに時間がかかる
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
同じ研究で、休んだあと、どれくらいで戻ったかも測っています。
2週間、完全に休んだあと——
間欠的な持久力が戻るまで:2週間
繰り返しスプリントする力が戻るまで:3週間
2週間休んだぶんを取り返すのに、3週間かかっています。
ここから言えることは、単純です。
休む期間が長いほど、戻す期間も長く要る。そして戻す期間は、休んだ期間より長くなる。
だから「ギリギリまで休んで、練習開始日から本気を出す」は成立しません。間に合いません。
逆に言えば、最初にしっかり休むためにこそ、後半で戻す時間を確保しておくということです。休むことと準備することは、対立しません。順番の問題です。
動き出すときは、ジョグと筋トレを同時に
2つ目の1/3に入ったら、動き出します。
よくあるのが「まず走って、体ができてから筋トレ」という順番ですが、僕はそうしません。
ジョグと筋トレを、同時に始めます。どちらも軽いところから。そして少しずつ強度を上げていきます。
理由は、さきほどのデータそのものです。
- 持久系は落ちている。しかも戻すのに時間がかかる → 早く始めないと間に合わない
- 筋力は落ちていない。→ 落ちていないところを、維持しながら上げていける
どちらも待つ理由がありません。筋トレを後回しにすると、最後の1/3で急に負荷を足すことになります。それがいちばん危ない形です。
ダッシュだけは、少し遅らせます。動き出してから5〜7日後が目安です。
どれくらい完全に休んだかで変わります。長くベタ休みしたなら、その分だけ後ろにずらしてください。
全力の走りは、体にかかる負担が桁違いです。そこだけは、土台ができてからにします。
具体的なスケジュール
まとめます。オフの長さで割ってください。2週間でも6週間でも、考え方は同じです。
| 期間 | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 最初の1/3 完全に休む | 寝る/食べる/サッカー以外のことをする 遊びでボールを触るのはOK | 走る/筋トレ/メニューとしての練習 |
| 次の1/3 動き出す | ジョグと筋トレを同時に、軽いところから 少しずつ強度を上げる 動き出して5〜7日後からダッシュ | いきなり全力/いきなり長時間 |
| 最後の1/3 戻す準備 | チーム練習に合流できる状態まで上げる ボールを使った動き/方向転換/全力の走り | ここで初めて動き出すこと |
例を出しておきます。
| オフの長さ | 完全休養 | 動き出す | 戻す準備 |
|---|---|---|---|
| 3週間 | 1週間 | 1週間 | 1週間 |
| 4週間 | 10日前後 | 10日前後 | 10日前後 |
| 6週間 | 2週間 | 2週間 | 2週間 |
オフが1週間しかない場合は、割りません。そのまま休んでください。1週間なら、落ちるものもたかが知れています。3分割が意味を持つのは、2週間以上のオフがあるときです。
オフは休養であり、次のシーズンの準備でもある
最後に、この記事の軸をもう一度書きます。
「しっかり休む」と「ダラダラ過ごす」は、まったく別のことです。
| しっかり休む | ダラダラ過ごす |
|---|---|
| いつまで休むかを決めている | 気づいたらオフが終わっている |
| 休む目的がある(頭と体を戻す) | なんとなく動かない |
| 動き出す日が決まっている | 動き出せないまま初日を迎える |
やっていることは、最初の数日だけ見たら同じです。違うのは、その先が決まっているかどうか。
オフは、シーズンとシーズンの「あいだ」ではありません。次のシーズンの、いちばん最初の期間です。
ここで体を戻しきれなかったぶんは、開幕してから取り返すことになります。試合をしながら体を作るのは、いちばんしんどいやり方です。
しっかり休んで、しっかり戻す。その両方を入れられるのが、オフという期間の値打ちです。
まとめ
- オフの期間を3つに割る。完全休養 → 動き出す → 戻す準備
- 最初の1/3は完全に休む。体より頭のほうが疲れている
- ボールは触っていい。やめるのは「トレーニング」であって「サッカー」ではない
- 完全に止めると、酸素を使う能力が −3.4〜−21.2%。少しでも動いていれば、落ち方はましになる
- 2週間の完全休養で落ちたのは「繰り返す力」だけ。スプリントのタイムとアジリティは落ちない
- 2週間休むと、戻すのに2〜3週間かかる。休んだ以上に、戻す時間が要る
- 動き出すときはジョグと筋トレを同時に、軽いところから。ダッシュは5〜7日後
- 「しっかり休む」と「ダラダラ過ごす」は別もの。違いは、動き出す日が決まっているかどうか
この記事で参照した研究
- Detrimental Effects of the Off-Season in Soccer Players: A Systematic Review and Meta-analysis(Clemente ら, Sports Medicine, 2021) — 12研究の系統的レビューとメタ分析。オフ期間中のトレーニング中止により、体脂肪(効果量0.26)と最大酸素摂取量(効果量 −1.48)に有意な悪影響。活動を完全に中止した場合、酸素消費能力は −3.4〜−21.2% 低下する。オフ期にトレーニングプログラムを行った場合、最大酸素摂取量と反復スプリント能力への悪影響はある程度緩和されるとしている
- The effects of short term detraining and retraining on physical fitness in elite soccer players(Joo, PLoS One, 2018) — 男子選手20名。2週間の完全休養後、Yo-Yo間欠性回復力テストレベル2(P<0.01)と反復スプリント(P<0.05)が有意に低下。スプリントタイム、アジリティ、体組成には有意な変化なし。その後の再トレーニングで、Yo-Yoは2週間、反復スプリントは3週間で元の水準に戻った。著者は、対象がセミプロであること、人数が20名と少ないこと、介入期間が短いことを限界として挙げている
※ 引用した研究の対象はいずれも男子のセミプロ・プロ選手です。年代や競技レベルによって当てはまり方は変わります。本記事の「3分割」や日数の目安は現場での考え方であり、その形式で検証された研究に基づくものではありません。
Consultation
オフのあいだに、体を整えておきたい人へ
シーズン中は、痛みがあっても止まれないことがあります。オフは、そこを一度きちんと見る数少ない機会です。毎年同じところが痛くなる、古い怪我が残ったまま次のシーズンに入っている。そういう場合は、動き出す前に確認しておくと、戻し方も変わります。S.T.R鍼灸院では、状態を見たうえで、オフのどこで何をするかも一緒に決めます。お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちらS.T.R鍼灸院(大阪・福島区)
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。効果には個人差があります。痛みが残っている状態での再開は避け、症状が続く場合は医療機関にご相談ください。