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現役トレーナー・S.T.R鍼灸院 院長

サッカーの現場でトレーナーとして活動する鍼灸師。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)。学生からプロまで、怪我・リハビリ・コンディショニングの現場対応を専門にしています。

「オフって、休んでいいんですか」

毎年聞かれます。そしてだいたいの選手が、2つのうちどちらかに振り切れています。

最後まで何もせずに過ごすか、逆に不安で3日目からダッシュを始めるか。

先に結論だけ知りたい人へ

オフの期間を、3つに割ってください。

最初の1/3は、完全に休む。次の1/3で、徐々に動き出す。最後の1/3で、チームに戻れる状態まで上げる。
オフが2週間でも6週間でも、この割り方なら当てはまります。

前回、シーズン終盤に怪我が増える理由を書きました。今回はその先、シーズンが終わったあとの話です。

最初の1/3は、完全に休んでいい

ここは言い切ります。休んでください。

理由は、体だけの話ではありません。

10ヶ月近く、毎週試合があって、毎日練習があった。体が疲れているのは当然ですが、それ以上に頭が疲れています。
勝ち負け、メンバー入り、評価。ずっと気を張っている状態が続いていました。そこから一度、完全に降りる時間が要ります。

現場で見ていると、体の疲れより、頭の疲れのほうが抜けにくいです。体は数日寝れば軽くなりますが、「サッカーのことを考えない」状態を作るには、もう少しかかります。

だから最初の1/3は、トレーニングをしない時期にしてください。走らない、筋トレしない。寝る、食べる、サッカー以外のことをする。

ただし、ボールは触っていいです。ここは矛盾しているようですが、違います。
やめてほしいのは「トレーニング」であって「サッカー」ではありません。友達と遊びでボールを蹴るのは、むしろ頭の休養になります。メニューとしてやるのがダメ、という話です。

何が、どれくらいで落ちるか

「休んでいい」と言いましたが、落ちることは落ちます。そこは正直に数字を出します。

Clemente ら(2021, Sports Medicine)が、オフ期間の影響を調べた12の研究をまとめています。

オフで起きること(12研究のまとめ)
測ったものどうなるか
最大酸素摂取量(持久力の土台)大きく低下
体脂肪増える

完全に活動を止めた場合、酸素を使う能力が −3.4〜−21.2%と報告されています。幅が大きいのは、休んだ期間や元の状態が研究によって違うからです。

そして大事なのがここです。

オフ期に何かしらやっていた選手は、この落ち方がましになっていました。「完全に止めるか」「少しでも動くか」で、差が出ます。
だからこそ、完全休養は最初の1/3までにしておくという話になります。

落ちるものと、落ちないもの

ここは、知っておくと安心できるところです。

Joo(2018, PLoS One)が、選手に実際に2週間の完全休養をさせて、何が落ちたかを測りました。

2週間、完全に休んだあと
測ったもの結果
間欠的な持久力(Yo-Yoテスト)有意に低下
繰り返しスプリントする力有意に低下
スプリントのタイム変化なし
アジリティ(切り返し)変化なし
体組成変化なし

落ちたのは「繰り返す力」だけです。一本のスプリントの速さも、切り返しの鋭さも、2週間では落ちていません。

つまり、2週間休んでも「遅くなる」わけではありません。落ちるのは「何度も繰り返したときに、後半まで持つか」のほうです。
オフ明けに「足が重い」と感じるのは、たいていここです。速さが落ちたのではなく、2本目3本目が続かない。

休んだ以上に、戻すのに時間がかかる

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

同じ研究で、休んだあと、どれくらいで戻ったかも測っています。

2週間、完全に休んだあと——
間欠的な持久力が戻るまで:2週間
繰り返しスプリントする力が戻るまで:3週間

2週間休んだぶんを取り返すのに、3週間かかっています。

ここから言えることは、単純です。

休む期間が長いほど、戻す期間も長く要る。そして戻す期間は、休んだ期間より長くなる。
だから「ギリギリまで休んで、練習開始日から本気を出す」は成立しません。間に合いません。

逆に言えば、最初にしっかり休むためにこそ、後半で戻す時間を確保しておくということです。休むことと準備することは、対立しません。順番の問題です。

動き出すときは、ジョグと筋トレを同時に

2つ目の1/3に入ったら、動き出します。

よくあるのが「まず走って、体ができてから筋トレ」という順番ですが、僕はそうしません。

ジョグと筋トレを、同時に始めます。どちらも軽いところから。そして少しずつ強度を上げていきます。

理由は、さきほどのデータそのものです。

  • 持久系は落ちている。しかも戻すのに時間がかかる → 早く始めないと間に合わない
  • 筋力は落ちていない。→ 落ちていないところを、維持しながら上げていける

どちらも待つ理由がありません。筋トレを後回しにすると、最後の1/3で急に負荷を足すことになります。それがいちばん危ない形です。

ダッシュだけは、少し遅らせます。動き出してから5〜7日後が目安です。
どれくらい完全に休んだかで変わります。長くベタ休みしたなら、その分だけ後ろにずらしてください。
全力の走りは、体にかかる負担が桁違いです。そこだけは、土台ができてからにします。

具体的なスケジュール

まとめます。オフの長さで割ってください。2週間でも6週間でも、考え方は同じです。

オフ期間を3つに割る
期間やることやらないこと
最初の1/3
完全に休む
寝る/食べる/サッカー以外のことをする
遊びでボールを触るのはOK
走る/筋トレ/メニューとしての練習
次の1/3
動き出す
ジョグと筋トレを同時に、軽いところから
少しずつ強度を上げる
動き出して5〜7日後からダッシュ
いきなり全力/いきなり長時間
最後の1/3
戻す準備
チーム練習に合流できる状態まで上げる
ボールを使った動き/方向転換/全力の走り
ここで初めて動き出すこと

例を出しておきます。

オフの長さ別の目安
オフの長さ完全休養動き出す戻す準備
3週間1週間1週間1週間
4週間10日前後10日前後10日前後
6週間2週間2週間2週間

オフが1週間しかない場合は、割りません。そのまま休んでください。1週間なら、落ちるものもたかが知れています。3分割が意味を持つのは、2週間以上のオフがあるときです。

オフは休養であり、次のシーズンの準備でもある

最後に、この記事の軸をもう一度書きます。

「しっかり休む」と「ダラダラ過ごす」は、まったく別のことです。

しっかり休むダラダラ過ごす
いつまで休むかを決めている気づいたらオフが終わっている
休む目的がある(頭と体を戻す)なんとなく動かない
動き出す日が決まっている動き出せないまま初日を迎える

やっていることは、最初の数日だけ見たら同じです。違うのは、その先が決まっているかどうか。

オフは、シーズンとシーズンの「あいだ」ではありません。次のシーズンの、いちばん最初の期間です。
ここで体を戻しきれなかったぶんは、開幕してから取り返すことになります。試合をしながら体を作るのは、いちばんしんどいやり方です。

しっかり休んで、しっかり戻す。その両方を入れられるのが、オフという期間の値打ちです。

まとめ

  • オフの期間を3つに割る。完全休養 → 動き出す → 戻す準備
  • 最初の1/3は完全に休む。体より頭のほうが疲れている
  • ボールは触っていい。やめるのは「トレーニング」であって「サッカー」ではない
  • 完全に止めると、酸素を使う能力が −3.4〜−21.2%。少しでも動いていれば、落ち方はましになる
  • 2週間の完全休養で落ちたのは「繰り返す力」だけ。スプリントのタイムとアジリティは落ちない
  • 2週間休むと、戻すのに2〜3週間かかる。休んだ以上に、戻す時間が要る
  • 動き出すときはジョグと筋トレを同時に、軽いところから。ダッシュは5〜7日後
  • 「しっかり休む」と「ダラダラ過ごす」は別もの。違いは、動き出す日が決まっているかどうか

この記事で参照した研究

※ 引用した研究の対象はいずれも男子のセミプロ・プロ選手です。年代や競技レベルによって当てはまり方は変わります。本記事の「3分割」や日数の目安は現場での考え方であり、その形式で検証された研究に基づくものではありません。

Consultation

オフのあいだに、体を整えておきたい人へ

シーズン中は、痛みがあっても止まれないことがあります。オフは、そこを一度きちんと見る数少ない機会です。毎年同じところが痛くなる、古い怪我が残ったまま次のシーズンに入っている。そういう場合は、動き出す前に確認しておくと、戻し方も変わります。S.T.R鍼灸院では、状態を見たうえで、オフのどこで何をするかも一緒に決めます。お気軽にご相談ください。

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S.T.R鍼灸院(大阪・福島区)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。効果には個人差があります。痛みが残っている状態での再開は避け、症状が続く場合は医療機関にご相談ください。