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現役トレーナー・S.T.R鍼灸院 院長

サッカーの現場でトレーナーとして活動する鍼灸師。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)。学生からプロまで、怪我・リハビリ・コンディショニングの現場対応を専門にしています。

「まだいけます」

シーズン終盤、これを言う選手ほど危ないです。本人に嘘はありません。本当に、まだいけると感じているんです。

ただ、怪我をするかどうかは、本人の感じ方だけでは決まりません。

先に結論だけ知りたい人へ

怪我が増える時期は、
日程表を見れば先に分かります。

試合の間が4日以内に詰まった期間は、怪我が増えると報告されています。そして日程は、たいてい何ヶ月も前から決まっています。しんどくなってから判断するのではなく、元気なうちに「この週は削る」と決めておく。それだけの話です。

疲労は「自分の感じ方」だけで決まらない

疲れているかどうかは、自分がいちばん分かる——と思われがちです。

半分は当たっています。だるさが何日続くか、朝起きたときの気分。そういうサインは本人にしか分かりません。そこはオーバートレーニングのサインと休む判断に書きました。

ただ、もう半分は、自分の感覚の外にあります。

体が壊れるかどうかは、「どれだけ疲れているか」だけでなく「どれだけ休む時間があるか」で決まります。そして休む時間は、自分では決められません。日程が決めます。

ここが、この記事の出発点です。自分の感覚を見るのとは別に、カレンダーを見る必要があります。

試合が4日以内に続くと、怪我が増える

ここには、まとまった研究があります。

Page ら(2022, Sports Medicine)が、プロサッカーの「過密日程」と怪我の関係を調べた8つの研究をまとめました。ここでいう過密日程とは、試合と試合の間が4日以下のことです。

試合中の怪我の発生率(1,000時間あたりの件数)
研究過密のとき通常のとき
Dupont ら97.719.3
Dellal ら43.318.6
Howle ら50.344.8

Dupont らの研究では5倍になっています。

ただし、正直に書いておきます。差が出なかった研究もあります。8つのうち5つで有意に増え、残りでは差がありませんでした。著者も「研究どうしのばらつきが大きく、統合した解析ができなかった」と限界を挙げています。

それでも、レビュー全体の結論は「過密日程では怪我のリスクが上がる」です。向きは一貫しています。

ただし「大怪我が増える」ではない

ここが、意外と知られていないところです。

同じレビューで、怪我をしたあとの離脱期間も調べられています。

怪我1件あたりの離脱日数
研究過密のとき通常のとき
Carling ら2.0日7.9日
Dellal ら9.5日17.5日

件数は増えるのに、1件あたりは軽い。

つまり過密日程で増えるのは、シーズンが終わるような大怪我ではなく、「数日抜ける細かいもの」です。張り、軽い肉離れ、足首のひねり。そういうものが積み重なります。

ここが、逆に厄介です。1件2日なら「たいしたことない」で済ませてしまいます。でもそれが何度も起きるということは、体が持ちこたえていないというサインです。
細かい怪我が増えてきたら、それ自体が警告だと思ってください。

シーズンの中盤から終盤に、いちばん増える

怪我が多い時期そのものを調べた研究もあります。

3シーズンを追った調査(J Funct Morphol Kinesiol, 2026)では、シーズンの中盤から終盤にかけて、怪我の発生率がいちばん高かったと報告されています。いちばん多かったのは筋肉の怪我でした。

著者は、この時期こそ体の状態と練習量を見ておくべきだとしています。

理由は想像がつきます。シーズン序盤は、体が新しく、日程もまだ詰まっていません。終盤は、疲労が積み上がったところに、順位のかかった試合が詰まってくる。いちばん強度が上がる時期と、いちばん体が削れている時期が、重なります。

そして、ここも正直に書いておきます。この調査は本文を確認できていません。タイトルと結論の要約から書いています。月単位でどう分布していたかまでは、分かっていません。

選べないものと、選べるもの

ここまでの話を、整理します。

怪我のリスクに関わるもの
自分では選べない自分で選べる
試合の日程練習で何をやるか、どれだけやるか
試合の間隔寝る時間
シーズンの長さ食べる量
監督のメンバー選びケアをするかどうか

左の列は、どうにもなりません。「試合が多すぎる」と言っても、日程は変わらない。

だから、左が厳しい時期ほど、右で調整するしかないということになります。

ここでよくある間違いが、これです。
試合が続いて調子が落ちてきたときに、「走り込みが足りないからだ」と練習を足す。
増やすべきときと、減らすべきときを取り違えています。過密日程の最中は、足す時期ではありません。

日程表を、先に見る

ここから具体的な話です。やることは単純です。

シーズンの日程を出して、試合の間が4日以内になっているところに印をつけてください。

やり方

  • リーグ戦・カップ戦・練習試合を全部同じカレンダーに書き出す
  • 試合と試合の間隔を数える
  • 4日以内で続いているところに印をつける
  • 移動をともなう試合があれば、そこにも印(移動日は休養日になりません)

サッカーの日程は、たいてい先に分かります。急に来るものではありません。それなのに、多くの場合「気づいたら連戦だった」という扱われ方をしています。

印をつけた週が、この記事でいう危ない週です。

学生の選手は、ここに学校の予定も足してください。テスト期間、修学旅行、合宿。寝る時間が削られる週も、体にとっては同じことです。日程表はサッカーだけのものではありません。

その週で何を削るか、元気なうちに決めておく

印をつけたら、次はこれです。

その週に入る前に、「何を削るか」を決めておいてください。

なぜ先に決めるのか。理由は1つです。

しんどくなってから決めると、たいてい削れません。
疲れているときほど「自分は大丈夫」「ここで休んだら置いていかれる」と思います。判断が鈍っているときに、判断させてはいけません。
決めるのは、元気なうちです。

削る順番の考え方を出しておきます。これは競技レベルや立場によって変わるので、あくまで一例です。

連戦の週に、削る順番の一例
順番削るもの理由
1番目追加の筋トレ試合が近い時期の高強度は、回復を圧迫する
2番目全力ダッシュの本数速い走りは負担が大きい。試合で足りている
3番目練習時間そのもの質を保ったまま、量を落とす
削らない寝る時間・食べる量・ウォームアップここを削ると、リスクが上がる方向にしか働かない

いちばん下の行が大事です。忙しい週ほど、真っ先に削られるのが睡眠と食事です。でもそこは、削ってはいけない側です。

削るものを決めたら、口に出しておいてください。自分の中だけで決めても、その週になったら忘れます。指導者やチームメイトに言っておくと、戻しにくくなります。

それでもサインが出たら、そっちが優先

最後に、線を引いておきます。

この記事は「先に決めておく」話です。カレンダーを見て、元気なうちに準備する。

でも、実際に体からサインが出たら、日程の話より、そっちが優先です。

計画は、体より優先されません。先に決めておくのは、判断を楽にするためであって、無理をするためではありません。

まとめ

  • 疲労は「自分の感じ方」だけで決まらない。休む時間があるかどうかで決まる部分がある
  • 試合の間が4日以内に詰まると、怪我が増えると報告されている(研究によっては5倍)
  • ただし差が出なかった研究もある。統合した解析はできていない
  • 増えるのは大怪我ではなく「数日抜ける細かいもの」。それが続くこと自体が警告
  • 怪我はシーズンの中盤から終盤に最も多いと報告されている
  • 日程は選べない。だから練習・睡眠・食事で調整するしかない
  • 日程表を先に見て、4日以内の連戦に印をつける
  • 削るものを、元気なうちに決めておく。睡眠・食事・ウォームアップは削らない

この記事で参照した研究

※ 引用した研究はいずれもプロ選手を対象としたものです。学生・アマチュアにそのまま当てはまるとは限りません。本記事で示した「削る順番」は一例であり、競技レベル・立場・チームの方針によって変わります。

Consultation

終盤になると、毎年同じところをやる人へ

シーズンの後半になると決まって同じ場所が痛くなる。細かい怪我が続いて、なかなか抜けきらない。そういうときは、疲労そのものより、体の使い方や左右差が背景にあることがあります。S.T.R鍼灸院では、動きを確認したうえで、日程とどう折り合いをつけるかも含めて一緒に考えます。お気軽にご相談ください。

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S.T.R鍼灸院(大阪・福島区)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。効果には個人差があります。痛みが続く場合や、休んでも回復しない場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。