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現役トレーナー・S.T.R鍼灸院 院長

サッカーの現場でトレーナーとして活動する鍼灸師。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)。学生からプロまで、怪我・リハビリ・コンディショニングの現場対応を専門にしています。

高い枕を買っても良くならへんのは、枕が悪いからとは限りません。

高さが合っていないだけかもしれない、という話です。

2万円の枕を買って、それでも朝首が痛い。そういう相談をよく受けます。そこで3万円の枕に買い替えても、高さが合っていなければ、たぶん同じことになります。

なので僕が現場で最初に言うのは、これです。

先に結論だけ知りたい人へ

枕を買う前に、バスタオルで自分の高さを出してください。

タオルなら折り方を変えるだけで数mm単位で調整できます。市販の枕にはできないことです。自分の高さが分かってから買えば、失敗しません。この記事に商品は出てきません。

判断の基準は「寝返りが打てるか」

枕が合っているかどうかを、どこで判断するか。基準はひとつでいいと思っています。

その枕で、スムーズに寝返りが打てるか。

マットレスのときと同じ基準です。寝返りは、体が自分で圧を逃がしている動きです。同じ場所に体重がかかり続けないように、無意識にやっています。

枕が高すぎると、首が曲がった状態で固定されます。その状態から頭を横に転がすのは、けっこう大変です。だから寝返りの回数が減る。減ると、同じところに圧がかかり続けます。

寝ている間のことなので、自分では分かりません。確かめ方は「その高さで、意識して寝返りを打ってみる」。ゴロッと転がって、首がついてこない・引っかかる感じがあれば、高さが合っていません。

「柔らかいか硬いか」「低反発か高反発か」は、この後の話です。まず高さ、次に寝返り。ここが決まらないうちに素材で悩んでも、答えは出ません。

高さが合っていないサイン

心当たりがあるものを見てください。

サイン考えられること
朝、首や肩が張っている高さが合わず、寝ている間ずっと首が曲がっている
朝、腕がしびれる・重い同上。首から出る神経の通り道に負担がかかっている可能性
気づいたら枕を外して寝ている高すぎることが多い。体が自分で逃げている
頭の位置を何度も直している合う位置がないので、探し続けている
横向きのときだけしんどい仰向けに合わせた高さになっている(横向きは高さが要る)

いちばん多いのは「気づいたら枕を外している」です。これを「枕が合わないから枕なしがいい」と解釈する人がいますが、たいていは高すぎるので、低いほうへ逃げているだけです。ゼロが正解というわけではありません。

ここは先に確認

腕のしびれが続く、力が入らない、細かい動作がしにくい。この場合は枕の調整で様子を見ずに、整形外科を受診してください。枕の話ではない可能性があります。

バスタオルで自分の高さを見つける

用意するのはバスタオル2〜3枚だけです。

手順やること
1枕を外して、仰向けで寝る。首の下にどれくらい隙間ができるか確かめる
2バスタオルを畳んで、後頭部から首にかけて敷く。首だけに入れない
3仰向けで顎が上がりも引きもしないところを探す。折り方を変えて数mmずつ動かす
4横向きになる。頭と体(背骨のライン)が床と平行になっているか見る
5その高さで寝返りを打ってみる。引っかからずに転がれるか
6その高さで3〜4日寝る。判断は朝の首の状態でする

なぜタオルなのか

折り方をひとつ変えるだけで、数mm変わるからです。

市販の枕で、これはできません。買ってしまえば高さは決まっていて、合わなければ買い替えるしかない。タオルなら、その日のうちに何度でも試せます。しかもタダです。

「そんな原始的なやり方で」と思われるかもしれませんが、この5mm単位の調整は、研究でも使われている方法です。次の章に書きます。

やるときの注意

  • 一気に変えない。1回の調整は5〜10mmまで。大きく変えると、どこが良かったのか分からなくなります
  • 1日で判断しない。新しい高さは最初は違和感が出ます。3〜4日は続けてください
  • 仰向けと横向きの両方で見る。横向きのほうが高さが要ります。両方が成立する高さを探します
  • タオルは寝ている間に崩れます。これは仕方ないです。高さを見つけるための道具であって、そのまま使い続けるものではありません

研究も、5mm単位で調整している

「タオルで調整」は、思いつきの節約術ではありません。

肩こりと首の痛みを訴える84名を対象にした研究(山田ら, 2023, J Phys Ther Sci)では、枕の高さを5mm単位で調整しています。

その調整の基準が、これです。

  • 横向きで、頭と体幹が平行になる
  • 仰向けで、首が適切な角度になる
  • スムーズに寝返りが打てる

ここまで書いてきたことと、ほぼ同じです。

結果は、首の痛みの点数(10点満点)が平均6.8 → 4.1。84人のうち42人(半分)が3点以上下がりました。

高さの目安は7〜11cm。ただし

枕のデザインについて調べた系統的レビュー(Applied Ergonomics, 2021)では、頭を乗せる前の中央部の高さ7〜11cmに「中等度の根拠」があるとしています。仰向けなら7〜9cm、横向きなら8〜11cm。

ただ、この数字の受け取り方には注意が要ります。

「7〜11cmが正解」ではなく、「7〜11cmのあたりに、多くの人の答えがある」。研究は平均を出しているだけで、あなたの数字までは教えてくれません。だから結局、自分で試すしかないんです。

正直に書いておきます

さっきの84人の研究、著者自身が限界を書いています。比べる相手(対照群)のない、前後の比較だけの研究だと。

つまり「調整したら良くなった」であって、「調整しなかった人より良かった」ではありません。

さらに、頸椎枕と普通の枕を比べた研究をまとめたレビューでは、効果の大きさが小さく、結論を出すには根拠が足りないとしているものもあります。

なので「枕の高さを合わせれば首の痛みが消える」とは言いません。言えるのは、高さを合わせずに枕を買い替え続けるのは、たぶん遠回りだということです。

枕を変えても治らないとき

タオルで高さを出して、3〜4日試して、それでも朝の首が変わらない。その場合は、枕以外を疑ってください。

マットレスが原因のことがあります

枕はマットレスの上に乗っています。マットレスが柔らかくて体が沈むと、相対的に枕だけが高くなります。枕を低くしても追いつきません。

この場合、直すべきはマットレスのほうです。順番としても、マットレスが先で枕が後になります。

日中の姿勢のことがあります

1日のうち、寝ているのは6〜9時間。残りの15時間以上は起きています。その15時間の姿勢のほうが、影響が大きいことは普通にあります。スマホを見る時間が長い選手は特にそうです。

首以外が原因のことがあります

肩甲骨が動かない、胸郭が硬い、股関節が硬くて背中が丸まる。首だけを見ても答えが出ないことは、現場ではよくあります。

受診の目安

しびれが続く/腕に力が入らない/細かい作業がしにくい/夜中に痛みで目が覚める。これらがある場合は、枕の調整で粘らずに整形外科へ行ってください。

まとめ

  • 高い枕を買っても良くならないのは、高さが合っていないだけかもしれない
  • 判断の基準は「寝返りが打てるか」。素材の話はその後
  • 「気づいたら枕を外している」は、高すぎるサインのことが多い
  • 買う前にバスタオルで数mm単位で自分の高さを出す。研究も5mm単位で調整している
  • 目安は7〜11cm。ただし研究は平均であって、あなたの数字ではない
  • 調整は一度に5〜10mmまで、3〜4日は続ける
  • それでも変わらないなら、マットレス・日中の姿勢・首以外を疑う
  • しびれや脱力があるときは受診する

自分の高さが分かったら、次はその高さを再現できる枕を選ぶ番です。ここでも条件はひとつで、「買った後に高さを変えられるか」。高さが固定の枕を選ぶと、せっかく出した数字が使えません。その話は次の記事に書きます。

この記事で参照した研究

※ 研究の結果がすべての人に当てはまるわけではありません。枕の高さは体格・寝る姿勢・マットレスの沈み方によって変わります。
※ 本記事は特定の製品の効果を保証するものではありません。

Consultation

枕を変えても、朝の首が変わらない人へ

高さを合わせても改善しない場合、原因が首以外にあることがあります。肩甲骨や胸郭の動き、日中の姿勢、マットレスとの組み合わせ——見るべきところは人によって違います。S.T.R鍼灸院では、寝具だけで終わらせずに、体の使い方まで含めて見ていきます。お気軽にご相談ください。

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S.T.R鍼灸院(大阪・福島区)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。効果には個人差があります。しびれ・脱力・強い痛みが続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。