高い枕を買っても良くならへんのは、枕が悪いからとは限りません。
高さが合っていないだけかもしれない、という話です。
2万円の枕を買って、それでも朝首が痛い。そういう相談をよく受けます。そこで3万円の枕に買い替えても、高さが合っていなければ、たぶん同じことになります。
なので僕が現場で最初に言うのは、これです。
先に結論だけ知りたい人へ
枕を買う前に、バスタオルで自分の高さを出してください。
タオルなら折り方を変えるだけで数mm単位で調整できます。市販の枕にはできないことです。自分の高さが分かってから買えば、失敗しません。この記事に商品は出てきません。
判断の基準は「寝返りが打てるか」
枕が合っているかどうかを、どこで判断するか。基準はひとつでいいと思っています。
その枕で、スムーズに寝返りが打てるか。
マットレスのときと同じ基準です。寝返りは、体が自分で圧を逃がしている動きです。同じ場所に体重がかかり続けないように、無意識にやっています。
枕が高すぎると、首が曲がった状態で固定されます。その状態から頭を横に転がすのは、けっこう大変です。だから寝返りの回数が減る。減ると、同じところに圧がかかり続けます。
寝ている間のことなので、自分では分かりません。確かめ方は「その高さで、意識して寝返りを打ってみる」。ゴロッと転がって、首がついてこない・引っかかる感じがあれば、高さが合っていません。
「柔らかいか硬いか」「低反発か高反発か」は、この後の話です。まず高さ、次に寝返り。ここが決まらないうちに素材で悩んでも、答えは出ません。
高さが合っていないサイン
心当たりがあるものを見てください。
| サイン | 考えられること |
|---|---|
| 朝、首や肩が張っている | 高さが合わず、寝ている間ずっと首が曲がっている |
| 朝、腕がしびれる・重い | 同上。首から出る神経の通り道に負担がかかっている可能性 |
| 気づいたら枕を外して寝ている | 高すぎることが多い。体が自分で逃げている |
| 頭の位置を何度も直している | 合う位置がないので、探し続けている |
| 横向きのときだけしんどい | 仰向けに合わせた高さになっている(横向きは高さが要る) |
いちばん多いのは「気づいたら枕を外している」です。これを「枕が合わないから枕なしがいい」と解釈する人がいますが、たいていは高すぎるので、低いほうへ逃げているだけです。ゼロが正解というわけではありません。
ここは先に確認
腕のしびれが続く、力が入らない、細かい動作がしにくい。この場合は枕の調整で様子を見ずに、整形外科を受診してください。枕の話ではない可能性があります。
バスタオルで自分の高さを見つける
用意するのはバスタオル2〜3枚だけです。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 枕を外して、仰向けで寝る。首の下にどれくらい隙間ができるか確かめる |
| 2 | バスタオルを畳んで、後頭部から首にかけて敷く。首だけに入れない |
| 3 | 仰向けで顎が上がりも引きもしないところを探す。折り方を変えて数mmずつ動かす |
| 4 | 横向きになる。頭と体(背骨のライン)が床と平行になっているか見る |
| 5 | その高さで寝返りを打ってみる。引っかからずに転がれるか |
| 6 | その高さで3〜4日寝る。判断は朝の首の状態でする |
なぜタオルなのか
折り方をひとつ変えるだけで、数mm変わるからです。
市販の枕で、これはできません。買ってしまえば高さは決まっていて、合わなければ買い替えるしかない。タオルなら、その日のうちに何度でも試せます。しかもタダです。
「そんな原始的なやり方で」と思われるかもしれませんが、この5mm単位の調整は、研究でも使われている方法です。次の章に書きます。
やるときの注意
- 一気に変えない。1回の調整は5〜10mmまで。大きく変えると、どこが良かったのか分からなくなります
- 1日で判断しない。新しい高さは最初は違和感が出ます。3〜4日は続けてください
- 仰向けと横向きの両方で見る。横向きのほうが高さが要ります。両方が成立する高さを探します
- タオルは寝ている間に崩れます。これは仕方ないです。高さを見つけるための道具であって、そのまま使い続けるものではありません
研究も、5mm単位で調整している
「タオルで調整」は、思いつきの節約術ではありません。
肩こりと首の痛みを訴える84名を対象にした研究(山田ら, 2023, J Phys Ther Sci)では、枕の高さを5mm単位で調整しています。
その調整の基準が、これです。
- 横向きで、頭と体幹が平行になる
- 仰向けで、首が適切な角度になる
- スムーズに寝返りが打てる
ここまで書いてきたことと、ほぼ同じです。
結果は、首の痛みの点数(10点満点)が平均6.8 → 4.1。84人のうち42人(半分)が3点以上下がりました。
高さの目安は7〜11cm。ただし
枕のデザインについて調べた系統的レビュー(Applied Ergonomics, 2021)では、頭を乗せる前の中央部の高さ7〜11cmに「中等度の根拠」があるとしています。仰向けなら7〜9cm、横向きなら8〜11cm。
ただ、この数字の受け取り方には注意が要ります。
「7〜11cmが正解」ではなく、「7〜11cmのあたりに、多くの人の答えがある」。研究は平均を出しているだけで、あなたの数字までは教えてくれません。だから結局、自分で試すしかないんです。
正直に書いておきます
さっきの84人の研究、著者自身が限界を書いています。比べる相手(対照群)のない、前後の比較だけの研究だと。
つまり「調整したら良くなった」であって、「調整しなかった人より良かった」ではありません。
さらに、頸椎枕と普通の枕を比べた研究をまとめたレビューでは、効果の大きさが小さく、結論を出すには根拠が足りないとしているものもあります。
なので「枕の高さを合わせれば首の痛みが消える」とは言いません。言えるのは、高さを合わせずに枕を買い替え続けるのは、たぶん遠回りだということです。
枕を変えても治らないとき
タオルで高さを出して、3〜4日試して、それでも朝の首が変わらない。その場合は、枕以外を疑ってください。
マットレスが原因のことがあります
枕はマットレスの上に乗っています。マットレスが柔らかくて体が沈むと、相対的に枕だけが高くなります。枕を低くしても追いつきません。
この場合、直すべきはマットレスのほうです。順番としても、マットレスが先で枕が後になります。
日中の姿勢のことがあります
1日のうち、寝ているのは6〜9時間。残りの15時間以上は起きています。その15時間の姿勢のほうが、影響が大きいことは普通にあります。スマホを見る時間が長い選手は特にそうです。
首以外が原因のことがあります
肩甲骨が動かない、胸郭が硬い、股関節が硬くて背中が丸まる。首だけを見ても答えが出ないことは、現場ではよくあります。
受診の目安
しびれが続く/腕に力が入らない/細かい作業がしにくい/夜中に痛みで目が覚める。これらがある場合は、枕の調整で粘らずに整形外科へ行ってください。
まとめ
- 高い枕を買っても良くならないのは、高さが合っていないだけかもしれない
- 判断の基準は「寝返りが打てるか」。素材の話はその後
- 「気づいたら枕を外している」は、高すぎるサインのことが多い
- 買う前にバスタオルで数mm単位で自分の高さを出す。研究も5mm単位で調整している
- 目安は7〜11cm。ただし研究は平均であって、あなたの数字ではない
- 調整は一度に5〜10mmまで、3〜4日は続ける
- それでも変わらないなら、マットレス・日中の姿勢・首以外を疑う
- しびれや脱力があるときは受診する
自分の高さが分かったら、次はその高さを再現できる枕を選ぶ番です。ここでも条件はひとつで、「買った後に高さを変えられるか」。高さが固定の枕を選ぶと、せっかく出した数字が使えません。その話は次の記事に書きます。
この記事で参照した研究
- Changes in neck pain and somatic symptoms before and after the adjustment of pillow height(山田ら, J Phys Ther Sci. 2023;35(2):106-113) — 84名。枕の高さを5mm単位で調整し、首の痛み(NRS)が平均6.8→4.1、42名(50%)が3点以上改善。ただし対照群のない前後比較であることを著者が限界として挙げている
- Effect of Different Pillow Designs on Promoting Sleep Comfort, Quality & Spinal Alignment(Applied Ergonomics, 2021) — 頭を乗せる前の中央部の高さ7〜11cmなどに中等度の根拠。仰向け7〜9cm、横向き8〜11cm
※ 研究の結果がすべての人に当てはまるわけではありません。枕の高さは体格・寝る姿勢・マットレスの沈み方によって変わります。
※ 本記事は特定の製品の効果を保証するものではありません。
Consultation
枕を変えても、朝の首が変わらない人へ
高さを合わせても改善しない場合、原因が首以外にあることがあります。肩甲骨や胸郭の動き、日中の姿勢、マットレスとの組み合わせ——見るべきところは人によって違います。S.T.R鍼灸院では、寝具だけで終わらせずに、体の使い方まで含めて見ていきます。お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちらS.T.R鍼灸院(大阪・福島区)
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。効果には個人差があります。しびれ・脱力・強い痛みが続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。