寝る前のストレッチは、体を柔らかくするためというより、その日の体のケアです。
練習で張った太もも裏やふくらはぎを、そのままにして寝るか、軽くゆるめてから寝るか。次の日の体の軽さは、そこで少し変わります。
この記事では、寝る前のストレッチでどこを、どれくらい、どんなふうにやるかを、現場で選手に伝えているとおりに書きます。寝る前にやらないほうがいいこともあわせて紹介します。
先に結論だけ知りたい人へ
寝る前は、気持ちいいくらいの強さで、20〜30秒ゆっくり。
強く伸ばさない、激しく動かない。リラックスしながらやる。
やる場所は太もも裏・ふくらはぎ・もも前・股関節・胸椎(背中の上のほう)。股関節は伸ばすより「動く範囲を出す」のがメイン。全部で5〜10分ほどです。お風呂を出てから布団に入るまでの間にやると、その日のケアと、眠る準備がいっしょにできます。
寝る前のストレッチは「ケア」の時間
現役トレーナーの視点寝る前のストレッチは、柔らかくするというより、ケアのイメージのほうが強い。眠りに入る準備でもある。
気持ちいい感じで、20〜30秒ゆっくりやるように言っている。強くやるのはNG。激しくやるのもよくない。リラックスしながらやる。
練習のあとの体は、使った筋肉が張っています。トレーナーのケアは「動く前に整える。直後は触らない。翌日にまた整える」が基本ですが、毎日トレーナーに見てもらえる選手ばかりではありません。
そこで、寝る前の数分を、自分でやる軽いケアの時間にします。「柔らかくなるまで伸ばす」のではなく、「今日の張りを、明日に持ち越さないように軽くゆるめる」。この考え方がいちばん大事です。
やる場所と、やり方
サッカーでよく使って、張りやすいところを中心に5か所です。
| 場所 | やり方の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 太もも裏 | あおむけに寝て、片脚を上げ、足の裏にタオルをかけて手前に引く | ひざは少し曲がっていてOK。20〜30秒 |
| ふくらはぎ | 座って脚を伸ばし、つま先にタオルをかけて手前に引く | かかとを押し出すように。20〜30秒 |
| もも前 | 横向きに寝て、上の脚のかかとをお尻に近づける | 腰を反らさない。20〜30秒 |
| 股関節 | あおむけでひざを立て、ひざを左右にゆっくり倒す。ひざを抱えて小さく回す | 伸ばすより「動く範囲を出す」のがメイン。ゆっくり数回 |
| 胸椎(背中の上のほう) | 横向きに寝てひざを曲げ、上の腕を大きく開いて胸を天井に向ける | 息を吐きながら開く。左右ゆっくり数回 |
左右やっても、全部で5〜10分ほどです。布団の上でできるものを選んでいるので、そのまま寝られます。
なぜ「20〜30秒」なのか
ストレッチを続けたときに柔らかさが変わるかを調べた研究では、1回30秒のストレッチで十分に効果があり、60秒に延ばしても、1日3回に増やしても、それ以上は変わらなかったと報告されています(Bandy・Irion, 1994/Bandy ら, 1997)。
寝る前のストレッチは柔らかくするのが目的ではありませんが、長くやればいいわけではないという目安になります。1か所20〜30秒で十分です。
股関節は「伸ばす」より「動かす」
股関節は、筋肉を伸ばすというより、関節が動く範囲を出すイメージでやります。ひざを左右に倒す、ひざを抱えて小さく回す、といった動きを、ゆっくり数回。止めて伸ばすよりも、じわっと動かしてほぐす感覚です。
寝る前にやらないほうがいいこと
- 強く伸ばす。痛いところまで伸ばすと、体は力を入れて逆に縮もうとします。痛みで体が緊張して、ケアにも、眠る準備にもなりません
- 反動をつける・激しく動かす。はずみをつけたり、速く動かしたりすると、体が「動くモード」に切り替わってしまいます。寝る前は、ゆっくりが基本です
- 息を止める。伸ばしているときに息を止めると、体に力が入ります。息を吐きながら伸ばすと、力が抜けやすくなります
- スマホを見ながらやる。画面の光や情報で、頭が起きてしまいます。寝る前のスマホについては睡眠、何から変えるべきかに書いています
ストレッチで痛みが出る、しびれる、同じところの張りが何日も抜けない、という場合は、ただの疲れではないかもしれません。無理に伸ばさず、一度相談してください。
お風呂から布団までの流れ
寝る前のストレッチは、お風呂を出てから布団に入るまでの間にやるのがおすすめです。
- 寝る90分前までに、お風呂を出る(体が温まって、ゆるみやすい)
- ストレッチを5〜10分(気持ちいいくらいで、ゆっくり)
- スマホを置いて、布団に入る
お風呂を寝る90分前に出る理由は、睡眠、何から変えるべきかに書いています。温まった体のほうが筋肉はゆるみやすいので、お風呂のあとはストレッチにもちょうどいいタイミングです。
眠りへの効果は、まだはっきりしていない
正直に書いておくと、「寝る前のストレッチで眠りが良くなる」ことを、はっきり確かめた研究はまだ多くありません。
眠れない悩みを持つ大人を4か月追った小さな研究では、ストレッチを続けたグループで、眠りの改善や、気持ちの緊張・不安の軽さが見られました(D'Aurea ら, 2019)。ただ、これは28人ほどの小さな研究で、ストレッチをしたのも寝る前ではなく夕方です。
なので、この記事では「ストレッチをすればよく眠れる」とは言いません。あくまでその日のケアとして続けてください。ゆっくり、リラックスしてやれば、結果として眠りに入る準備にもなる。そのくらいの位置づけです。
まとめ
- 寝る前のストレッチは、柔らかくするよりその日のケア。眠りに入る準備でもある
- やる場所は太もも裏・ふくらはぎ・もも前・股関節・胸椎
- 気持ちいいくらいで、20〜30秒ゆっくり。長くやっても効果は変わらない
- 股関節は伸ばすより「動く範囲を出す」のがメイン
- 強く伸ばさない・激しく動かさない・息を止めない。リラックスしながら
- お風呂を出る(寝る90分前)→ ストレッチ5〜10分 → スマホを置いて布団へ
この記事で参照した研究
- The effect of time on static stretch on the flexibility of the hamstring muscles(Bandy・Irion, Phys Ther, 1994) — 太もも裏が硬い人を対象に、静的ストレッチの時間を15秒・30秒・60秒で比較。30秒と60秒は15秒より柔軟性が改善し、30秒と60秒の間に差はなかった
- The effect of time and frequency of static stretching on flexibility of the hamstring muscles(Bandy ら, Phys Ther, 1997) — 93人を5群に分けて比較。1回30秒で十分に効果があり、60秒に延ばしても、1日1回から3回に増やしても、柔軟性はそれ以上改善しなかった
- Effects of resistance exercise training and stretching on chronic insomnia(D'Aurea ら, Braz J Psychiatry, 2019) — 慢性不眠の成人を、筋トレ・ストレッチ・何もしない群(各8〜10人)に分けて4か月追跡。筋トレとストレッチで、睡眠の改善は同程度。ストレッチ群は緊張・不安の得点が低かった。人数が少なく、ストレッチは夕方に行っている
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。ストレッチで痛みやしびれが出る場合は中止し、専門家にご相談ください。