鍼灸やマッサージ、整体——ケアは「疲れたら受けるもの」だと思っていませんか? 実は、受けるタイミングを間違えると、回復をかえって遅らせてしまうことがあります。
多くの人がイメージする「試合後にマッサージでケア」は、実は逆効果になりかねません。この記事では、現場で選手をケアしている立場から、いつケアを受けるのがベストで、いつは避けるべきかを、理由つきで紹介します。
まず押さえたい、ケアの基本原則
タイミングの話に入る前に、僕がケアで一貫して大事にしている原則がこれです。
- 動く前(練習前・試合前)に整える
- 動いた直後は、触らない
- 翌日に、また整える
ポイントは、ケアの目的を「疲れを揉んで取るもの」ではなく、「ベストな状態で動き出すためのもの」と考えること。この発想が、世間の一般的なイメージとは少し違うところです。
練習前・試合前のケアが、いちばん大事
僕がもっとも重視しているのが、動く前のケアです。とくに試合当日は、ここで仕上げます。
理由はシンプル。どんなにいい準備をしていても、可動域の制限や、変な張りが残っていると、それが試合中ずっと気になってしまう。「あの違和感が気になって集中できなかった」——そんな経験、あなたにもありませんか。コンディションが悪いと、せっかくの実力も出し切れません。だから、気になる要素をゼロにして動き出す。これが動く前のケアの狙いです。
見るのは「可動域・張り」+「本人の感覚」
整えるのは主に、可動域と張り。そしてもうひとつ大事にしているのが、本人の感覚です。選手が「ここが気になる」と感じている場所を、一緒に取っていく。トレーナーが一方的に決めるのではなく、その日の本人の感覚に合わせます。
試合当日は「やりすぎない」
試合前だからこそ、強く揉みすぎない。程よく、最低限に。ガッツリやると、かえってだるさが出てしまうことがあります。整えるのが目的で、追い込むのが目的ではありません。
タイミングは、アップの直前を避ける。選手にはそれぞれ、アップ前のルーティンがあります。その流れを邪魔しないよう、ルーティンの時間から逆算してケアを入れます。流れは ケア → 各自のアップ前ルーティン → アップ → 試合 の順です。
試合直後にケアしてはいけない理由
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。ハードに動いた直後は、ケアをしません。
理由は、炎症です。試合や激しい練習でハードに動いたあとの筋肉は、少なからず炎症を起こしている状態。そこを揉んだりほぐしたりすると、炎症をさらに広げて、回復を遅らせてしまうのです。良かれと思って受けたマッサージが、逆に翌日の疲れを長引かせる——これは知らない選手がとても多い。
現役トレーナーの視点「試合後こそマッサージでケア」と思われがちですが、僕は逆です。直後は触らない。炎症している筋肉をいじると、回復が遅れる。試合直後の疲労は、ケアで抜くのではなく、休養と栄養で抜くものなんです。
では試合後の疲れはどう抜くのか。それは前回の記事で紹介した睡眠・栄養・水分・軽いジョグ(アクティブリカバリー)の役割です。試合直後は「ケアで揉む」のではなく「休養で回復させる」。そして炎症が落ち着いてくる翌日に、ケアで整える。この切り替えが大事です。
ケアのタイミング早見表
| タイミング | ケア | 狙い・理由 |
|---|---|---|
| 練習前・試合前 | 受ける(最重要) | 可動域・張りを整え、気になる要素ゼロで動き出す |
| 試合・練習の直後 | 受けない | 筋肉が炎症状態。揉むと回復が遅れる |
| 翌日 | 受ける | 炎症が落ち着くので、ここで整える |
普段のケアとセルフケアの使い分け
普段(週の中)は、練習があるときにトレーナーがケアをします。動く前に整える、の原則どおりです。それに加えて、日常のセルフケアは選手自身に任せています。ストレッチやほぐしなど、自分でできるケアは習慣として続ける。プロのケアとセルフケアを併用するのが、普段の形です。
まとめ
- ケアは「疲れを取る」より、ベストな状態で動き出すためのもの
- 練習前・試合前のケアがいちばん大事。可動域・張り+本人の感覚を整える
- 試合当日はやりすぎない。アップ前ルーティンから逆算して入れる
- 試合・練習の直後はケアしない。炎症した筋肉を揉むと回復が遅れる
- 直後の疲労は睡眠・栄養・水分・軽いジョグで抜き、翌日にケアで整える
- 普段はトレーナーのケア+選手自身のセルフケアを併用
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、症状によって適切な対応は異なります。強い痛みや怪我がある場合は、自己判断せず専門家にご相談ください。