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現役トレーナー・S.T.R鍼灸院 院長

サッカーの現場でトレーナーとして活動する鍼灸師。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)。学生からプロまで、怪我・リハビリ・コンディショニングの現場対応を専門にしています。

「朝起きたときが、いちばん腰が痛い」

これ、現場でよく聞きます。そしてそのほとんどが、腰そのものより先に確認したほうがいいことがあるタイプです。

先に結論だけ知りたい人へ

朝がいちばん痛くて、動き出したらマシになる。
それなら疑うのは腰やなくてマットレスの硬さです。

買い替えるなら条件は2つ。「中くらいの硬さ」で「試せるもの」。この2つだけ守ってください。

そして「腰痛には硬いマットレス」は、研究では支持されていません。ただし答えは「柔らかい」ではなく「中くらい」です。柔らかいほど良い、ではありません。

逆に、動いたときだけ痛い腰痛は、寝具を変えても変わりません。そこも後半ではっきり書きます。まず、自分がどっちかを分けるところからです。

まず切り分ける——朝だけ痛いか、動いて痛いか

腰痛とひとことで言っても、現場では最初にここを分けます。ここを分けずに対策すると、だいたい外れます。

まず自分がどちらかを確認する
こういう痛み方まず見るところ
朝がいちばん痛い
動き出すとマシになる
寝ている途中で目が覚める
寝ている環境
(マットレス・姿勢)
動くと痛い
反ると痛い、ひねると痛い
練習の後半で出てくる
体の動き方
(寝具では変わらない)

分け方は単純です。「寝ているあいだに悪くなっているのか」「動いているあいだに悪くなっているのか」。それだけです。

朝いちばん痛くて、動き出すとマシになる。これは寝ているあいだに腰に負担がかかり続けている可能性があります。8時間ずっと同じところに体重が乗っているわけなので、環境の影響を受けて当然です。

一方で、動いたときだけ痛いなら、悪さをしているのは動きです。どんなマットレスを買っても、そこは変わりません。

「腰痛には硬いマットレス」は、正しくなかった

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

「腰が痛いなら硬い布団で寝なさい」——聞いたことがあると思います。僕も昔そう教わりました。ところが、これを実際に調べた研究があって、硬いほうが良いという結果にはなりませんでした。

Kovacs ら(2003, The Lancet)が、慢性的な腰痛のある成人313人を、硬いマットレスと中くらいの硬さのマットレスにランダムに振り分けて、90日間追いかけました。本人にも評価者にも、どちらのマットレスか分からないようにした(二重盲検)研究です。

90日後、中くらいの硬さのほうが良かった度合い(オッズ比)
測ったものオッズ比
寝ているときの痛み2.36
起きたときの痛み1.93
日中の動きにくさ2.10

数字の細かい意味は置いておいて、どれも「中くらいの硬さのほうが良かった」という向きです。

そして注目してほしいのは、効果が出ているのが「寝ているとき」と「起きたとき」だということです。この研究自体が、まさに朝の腰痛を指しています。だからこの記事は、そこに絞っています。

この研究の限界も書いておきます。対象は「慢性の非特異的腰痛がある成人」で、スポーツ選手ではありません。そしていちばん取り違えやすいところですが、この研究が比べたのは「硬い」と「中くらい」の2つだけです。柔らかいマットレスはそもそも比較に入っていません。なのでこの結果から言えるのは「硬いほうが良いとは言えなかった」までで、「柔らかいほうが良い」ではありません。腰が沈み込むほど柔らかいものは、この記事ですすめていません。

「中くらいの硬さ」をどう見分けるか

問題は、「中くらい」に共通の基準がないことです。メーカーが「ふつう」と書いていても、実際の硬さはバラバラです。数字で選べません。

なので、現場では体で確認します。仰向けに寝て、腰の下に手を入れてみてください。

仰向けで、腰の下に手を差し込んだとき
状態意味
すっと入って、すき間が大きい硬すぎ。腰が浮いて、そこで支えている
手が入らないくらい沈んでいる柔らかすぎ。腰が落ちている
手のひらがぴったり沿って入るちょうどいい

もうひとつ大事なのが、同じマットレスでも、人によって硬さが変わるということです。体重70kgの選手と体重50kgの選手が同じマットレスに寝たら、沈み方はまったく違います。

「あの選手が良いと言っていた」で選べないのは、これが理由です。硬さは商品の性質ではなく、自分の体重との組み合わせで決まります。

買う前に、家で試せることもあります。いま硬すぎると感じるなら、上に敷きパッドやマットレストッパーを1枚足すだけで変わることがあります。逆に柔らかすぎるなら、先にへたっているだけかもしれません。数千円で分かるなら、そっちが先です。枕のときにバスタオルで試したのと、考え方は同じです(枕は買う前にバスタオルで試す)。

買うなら——条件は2つだけ

それでも買い替える、となったときの条件です。硬さは寝てみないと分かりません。寝具売り場で5分寝ても、8時間寝たときのことは分かりません。

なので、条件はこの2つに絞ってください。

マットレスを選ぶときの条件
条件理由
① 試せる
(返品・返金の期間がある)
合わなかったときに戻せる。硬さは寝てみないと分からない
② 外しても戻せる金額試せない商品なら、失敗しても痛くない金額にする

どちらか一方を満たしていれば大丈夫です。10万円で返品できないものだけは、やめておいたほうがいいと思います。

各社の返品条件(お試し期間、返送料、いつから返せるか)は、実際に調べて表にまとめてあります。そちらを見てください。

▶ サッカー選手はマットレスをどう選んでいるか|スペックより「試せるか」
NELL・エマ・エアウィーヴ・エムリリーのお試し期間と返品条件を一覧にしています。選手が実際に何を使っているかも書きました。

動いて痛い腰痛は、寝具では変わらない

ここからは、切り分けのもう片方です。

反ると痛い、ひねると痛い、練習の後半になると出てくる。この腰痛は、マットレスを変えても変わりません。

選手の腰痛の危険因子を調べた研究をまとめた系統的レビュー(Moradi ら, 2015, Rehabil Res Pract)があります。7つの追跡研究をまとめたものです。

選手の腰痛の危険因子(Moradi ら, 2015)
根拠の強さ因子
強い腰の可動域の低下(前に曲げる・反らす)/腰痛の既往/体重が重いこと
中くらい股関節前側の硬さ/BMIが高いこと
根拠が足りない年齢・性別・身長・競技歴/ハムストリングの硬さ/週の練習回数

見てのとおり、寝具はここに入ってきません。選手の腰痛は、動きと使い方の話です。

そしてもうひとつ大事なのが、「腰痛の既往」が強い危険因子として入っていることです。一度やった人は、また出やすい。だから、治まったところで終わりにせず、原因を潰しておく必要があります。

この研究の限界も書いておきます。著者自身が、「対象がいろいろな競技の選手をまとめたもので、競技ごとの結果になっていない」「参加者・測定方法・統計手法のばらつきが大きい」ことを限界として挙げています。サッカー選手だけを見た結論ではありません。

現場でよく見る形——腰が「代わりに」動いている

動いて痛い腰痛で、僕が現場でいちばんよく見るのがこれです。

股関節と背中(胸のあたり)が動かへんぶんを、腰が代わりに動いている。

サッカーの動きを考えると分かりやすいです。シュート、クロス、切り返し、ヘディング。どれも、股関節を大きく使って、体をひねる動きです。

ここで股関節が硬いと、その動きぶんをどこかが出さないといけません。そのしわ寄せが行くのが腰です。本来そこまで反ったりひねったりする場所ではないところが、毎回代わりに動く。それを何百回も繰り返します。

さっきの表で「股関節前側の硬さ」が中くらいの根拠で挙がっているのは、こういうことだと考えています。

だから、痛いところと原因が離れます。腰をほぐしても、その場は楽になるけど、また出る。動かへん場所が動くようにならん限り、腰は代わりに働き続けます。マッサージで戻らへん腰痛が多いのは、これが理由だと思っています。

関連する話は、こちらにも書いています。

これは寝具の話ではない、というサイン

最後に、いちばん大事なところです。

次のどれかがあるときは、マットレスの話ではありません。医療機関を受診してください。

すぐに受診したほうがいいサイン

  • 脚のしびれ・力が入らない感じがある(とくに両脚)
  • おしっこが出にくい・出てしまう、股のあたりの感覚がおかしい
  • 熱がある、体重が減っている、体調が悪い日が続いている
  • 夜、寝ていても痛い/じっとしていても痛みが強い
  • 強くぶつけた・落ちたあとから痛い
  • 痛みがだんだん強くなっている

とくに「おしっこが出にくい」「股のあたりの感覚がない」「両脚の力が入らない」は、様子を見てはいけないものです。これは僕らのところではなく、病院です。

それから、成長期の選手で「反ると痛い」が続く場合も、一度診てもらってください。腰の骨の疲労骨折が背景にあることがあります。ここは大人の腰痛とは分けて考える必要があります。

まとめ

  • まず切り分ける。朝だけ痛いか、動いて痛いか
  • 朝がいちばん痛くて動くとマシなら、寝ている環境を疑う
  • 「腰痛には硬いマットレス」は、研究では支持されなかった(313人・90日)。ただし比べたのは「硬い」と「中くらい」だけで、「柔らかいほど良い」ではない
  • 「中くらいの硬さ」は数字では選べない。仰向けで腰の下に手を入れて確認する
  • 硬さは体重との組み合わせで決まる。人のおすすめでは選べない
  • 買うなら「試せる」か「外しても戻せる金額」。どちらかを満たすもの
  • 動いて痛い腰痛は、寝具では変わらない。股関節と背中が動かへんぶんを腰が代わりに動いていることが多い
  • しびれ・排尿の異常・発熱・夜間の痛みは、すぐ受診

この記事で参照した研究

※ 本記事は寝具の硬さに関する研究を紹介したものであり、特定の製品が腰痛を改善することを示すものではありません。効果には個人差があります。

Consultation

マットレスを変えても、戻らなかった人へ

寝具を見直しても腰の痛みが変わらない場合、原因は寝ている環境ではなく、体の動き方にあることがあります。とくに、股関節や背中が動かないぶんを腰が代わりに動いているケースは、腰だけを施術しても戻りにくいです。S.T.R鍼灸院では、どこが動いていないのかを実際に確認したうえで、施術と、家でやることを一緒に決めます。お気軽にご相談ください。

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S.T.R鍼灸院(大阪・福島区)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。効果には個人差があります。強い痛み・しびれ・発熱・排尿の異常をともなう場合、また痛みが続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。