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現役トレーナー・S.T.R鍼灸院 院長

サッカーの現場でトレーナーとして活動する鍼灸師。学生からプロまで、怪我・リハビリ・コンディショニングの現場対応を専門にしています。

先日、灼熱のなかでの練習試合がありました。終わったあと、選手たちが口をそろえて、こう言ったんです。「長めのダッシュのあと、息が戻らなくて、それがしんどかった」と。

ただ「疲れた」「体力がない」ではなく、"息が上がったあと、戻らない"。この言い方、実はスポーツ科学的にとても正確に現象を捉えています。そして、いわゆる「スタミナ不足」とは別モノなんです。この記事で、その正体を解説します。

「バテる」には2種類ある

まず整理しましょう。「バテる」とひと口に言っても、中身は2つに分かれます。

  • 持久力の問題 … 長い時間、走り続けられない(ずっと動いていると徐々にキツくなる)
  • 回復力の問題 … 全力ダッシュのあと、次までに息が戻らない・回復しきれない

サッカーは、ずっと一定で走る競技ではありません。ダッシュ → 少し休む → またダッシュの繰り返しです。だから本当に効いてくるのは、多くの場合後者の「回復力」。選手が感じた「息が戻らない」は、まさにこれです。

深掘りメモ:RSA(繰り返しスプリント能力)

この「全力を繰り返して、その間にどれだけ回復できるか」という能力を、スポーツ科学ではRSA(Repeated Sprint Ability)と呼びます。研究では、サッカーの試合で走る総距離や高強度ランの量とも関係することが示されており、持久力(長く走る力)とは区別して考えられています。

「息が戻る」=体が"借金"を返している時間

なぜダッシュのあと息が上がるのか。イメージしやすいのは「借金」です。

全力ダッシュは、その場ですぐ使える"前借り"のエネルギーで走ります(酸素を使わず、瞬発的に)。走り終わると、その前借りした分を"返済"しないといけません。ハアハアと息が上がっているのは、まさに体が酸素を取り込んで、借金を返している時間なんです。

そして——この返済スピードを決めているのが「有酸素能力」。有酸素の力が高い選手は、返済が速い=息が早く戻る=すぐ次の全力に行ける。逆に有酸素が弱いと、返済が遅れて、いつまでもハアハアが続きます。

深掘りメモ:使うのは無酸素、戻すのは有酸素

短いダッシュのエネルギー(ATP-CP系・解糖系)は、酸素を使わず(無酸素で)瞬発的に使われます。一方で、使い切ったそれを"次のダッシュのために再充填する"のは有酸素の仕事。運動後も酸素を多く消費し続ける現象はEPOC(運動後過剰酸素消費)と呼ばれ、これが「息が戻るまでの時間」の正体です。研究では、この酸素の戻りが速い選手ほど、繰り返しスプリントでのタイム低下が小さいと報告されています。

【誤解を正す】「乳酸が溜まったからしんどい」は、もう古い

ここで、よくある誤解をひとつ。「乳酸が溜まると疲れる・動けなくなる」——これは、今の科学では否定されています。

むしろ乳酸は"燃料"で、心臓や他の筋肉がエネルギーとして再利用しています。疲労のより直接的な要因は、乳酸そのものではなく、筋肉の中の環境変化(酸性度の変化など)だと考えられています。そして有酸素能力が高い選手は、こうした環境をリセットする処理も速い。やはり、カギは有酸素なんです。

なぜ"灼熱"で、全員が一気にバテたのか

いつもの試合では出なかったのに、灼熱のなかで全員が「息が戻らない」と感じた。これにも理由があります。

暑いと、体は体温を下げるために血液を皮膚(体の表面)に大量に回します。すると、その分筋肉に回る血液が減る。血液は酸素の配達係ですから、返済(回復)に必要な酸素の供給が滞るのです。さらに汗で体の水分が減ると、血液も巡りにくくなる。つまり——

選手の体力が急に落ちたわけではありません。暑さが、回復(借金の返済)を横から邪魔していた——これが「灼熱で全員バテた」の正体です。だから、涼しい時間帯の公式戦では起きにくいのです。

現役トレーナーの視点

選手が「体力がない」ではなく「息が戻らない」と言葉にしてくれたのは、すごく鋭い。原因が違えば、対策も変わります。ただ長い距離を走り込むより、"回復するエンジン"を鍛えること、そして暑さそのものへの備え。ここに手を打つべきなんです。

まとめ

  • 「バテる」には持久力の問題回復力の問題がある
  • サッカーはダッシュの繰り返し。効くのは多くの場合「回復力(RSA)」
  • 「息が戻る」=体が酸素で"借金"を返している時間。その速さを決めるのが有酸素能力
  • 使うのは無酸素、戻すのは有酸素。ここが回復のカギ
  • 「乳酸が溜まって疲れる」は古い理解。乳酸はむしろ燃料
  • 灼熱は、血流を奪って回復を邪魔する。体力低下ではなく暑さの影響

Consultation

その"バテ"、原因を切り分けませんか

「走り込んでいるのに、後半に動けなくなる」——それは持久力ではなく、回復力や暑さ対策の問題かもしれません。原因が変われば、やるべきことも変わります。S.T.R鍼灸院では、体の状態を見ながら、コンディショニングをサポートしています。お気軽にご相談ください。

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S.T.R鍼灸院(大阪・福島区)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、効果には個人差があります。暑熱環境での運動は熱中症のリスクを伴います。無理をせず、こまめな水分補給と体調管理を最優先にしてください。