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現役トレーナー・S.T.R鍼灸院 院長

サッカーの現場でトレーナーとして活動する鍼灸師。学生からプロまで、怪我・リハビリ・コンディショニングの現場対応を専門にしています。

前回、後半のバテは「スタミナ不足」ではなく「回復力(息が戻る速さ)」の問題で、それを決めるのは有酸素能力だという話をしました。では、その"回復するエンジン"はどう鍛えるのか。実践編です。

ただ長く走るより「高強度インターバル(HIIT)」

「回復力をつけたいから、とにかく長い距離を走り込む」——これ、間違いではありませんが、効率は良くありません。

回復力(繰り返しの全力に耐える力)を伸ばすなら、高強度インターバル(HIIT)——短く強く追い込んで、少し休んで、また追い込む、を繰り返すトレーニングのほうが効きます。研究でも、繰り返しスプリントからの回復力を最も高めるのは、かなり高い強度でのインターバルだと報告されています。

深掘りメモ:なぜHIITが効くのか

高強度で追い込むと、筋肉の細胞に「今の生産能力では足りない」という強いシグナルが出ます。これが引き金となって、ミトコンドリア(細胞のなかでエネルギーを作る"発電所")が増え、質も上がります。ミトコンドリアが増える=酸素を使ってエネルギーを作る力が上がる=回復(借金の返済)が速くなる、という流れです。ダラダラ長く走るより、短く強く追い込むほうがこのシグナルが強く出るため、HIITは短時間で効率よく発電所を増やせます。ただし適応には数週間かかるので、継続が前提です。

サッカー向けの組み方(例)

ポイントは、「全力に近い動き → 不完全な回復 → また全力」を繰り返すこと。ラボの決まった形でなくても、工夫すれば現場で作れます。たとえば——

  • いくつかの種目(切り返し・体幹・ジャンプなど)を短時間ずつ行い、その合間に短い全力ダッシュ(数十メートル)を挟む
  • ダッシュ後の戻りを軽いジョグにして、"動きながら回復"させる(完全に止まらない)
  • これを何種目か連続で回し、1つのサーキットにする

この形だと、切り返し・体幹・爆発力を「疲れた状態で」鍛えられ、同時に心拍が上がりっぱなしになるのでHIIT効果も得られます。試合の「動いて疲れた状態で、また全力」という場面をそのまま再現できるわけです。

頻度は"時期"で変える(前回の期分けの考え方)。回復力をしっかり伸ばしたいオフ〜プレシーズンは週2回を目安に。試合が続くシーズン中は、試合そのものが高強度の刺激になるので週1回で"維持"でも構いません。増やせない時期に無理をしないのも、立派な調整です。

暑さへの備え(ここが今回のカギ)

灼熱のなかでの「息が戻らない」は、暑さが回復を邪魔した結果でした。だから、暑さそのものへの備えも、回復力と同じくらい大事です。

暑熱順化 — 暑さに"慣らす"

いちばん根本的なのが暑熱順化。暑い時間帯に段階的に体を慣らしていくと、汗のかき方や体温調節が上手くなり、暑さのなかでも動ける体になります。研究でも、暑い環境での練習を1〜2週間続けると、暑さのなかでのパフォーマンスが上がることが示されています。

安全メモ

暑熱順化は「わざと暑い中でやる」ため、熱中症のリスクと隣り合わせです。必ず短時間から段階的に・こまめな給水とともに・体調を見ながら。とくに学生・ジュニアは無理をさせないこと。「鍛える」より「慣らす」感覚で行ってください。

アイススラリー — 試合前・ハーフタイムに"内側から冷やす"

今回いちばん紹介したいのがこれです。アイススラリー(シャーベット状の氷飲料)を運動前に飲むと、氷が体の中で溶けるときに大量の熱を奪い、深部体温を効率よく下げられます。体温が上がりきるまでの"余白"ができるので、バテるのを遅らせられるわけです(これをプレクーリングといいます)。

  • 作り方:スポーツドリンクを凍らせてシャーベット状にするだけ。糖質・電解質も一緒に摂れて一石二鳥
  • タイミング:運動の約30分前に。ハーフタイムに飲むのも効果的で、暑さのなかでの後半の動きが改善したという研究があります。前後半のあるサッカーに、とても相性がいい方法です

ただし万能ではありません。効果は量・タイミング・暑さへの慣れ具合で変わり、「飲めば必ず速くなる」というものではありません。暑さのなかで深部体温を下げ、バテを遅らせる"低リスクで実用的な一手"、という位置づけが正確です。

給水 — 喉が渇く前に、計画的に

基本ですが大事です。脱水はパフォーマンスを確実に落とします。喉が渇いてからではなく、飲めるタイミングを決めて計画的に。目安として、練習前後の体重が2kg以上減らないように管理するのも役立ちます。

アイスバス(冷水浴)は"使い分け"

練習後のアイスバスも、暑い日には有効です。深部体温を下げ、疲労感を抜くのに役立ちます。ただし、ひとつ知っておいてほしいことがあります。

筋トレ直後に毎回アイスバスをすると、筋力アップの適応を少し邪魔してしまうという研究があります。以前の記事で「試合直後のケアは炎症を邪魔する」という話をしましたが、それと同じ理屈です。だから——

  • 暑い日・過密日程で「とにかく回復優先」のとき → 使う
  • 筋力を伸ばしたい鍛錬の時期 → 毎回は多用しない

目的によって使い分けるのが正解です。

現役トレーナーの視点

「走り込めばスタミナがつく」で止まらないこと。回復力はHIITで、暑さは慣らしと冷却で——原因に合った手を打つ。そして時期によって量を変える。すべてを一度にやろうとせず、今の時期に必要なものから組み込んでいけば十分です。

まとめ

  • 回復力を伸ばすなら、長い走り込みより高強度インターバル(HIIT)
  • 「全力 → 不完全な回復 → また全力」のサーキットで、疲労下の力をまとめて鍛える
  • 頻度は時期で調整(プレシーズン週2で向上/シーズン中週1で維持)
  • 暑さ対策の本命は暑熱順化(段階的に慣らす)。安全第一で
  • アイススラリーを試合前・ハーフタイムに。深部体温を下げてバテを遅らせる
  • 給水は計画的に。アイスバスは目的で使い分ける

Consultation

暑さに強い体づくり、相談ください

「暑いと後半に動けなくなる」「回復力をどう鍛えればいいか分からない」——原因を切り分けて、今の時期に合った手を打つことが近道です。S.T.R鍼灸院では、体の状態を見ながら、コンディショニングをサポートしています。お気軽にご相談ください。

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S.T.R鍼灸院(大阪・福島区)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、効果には個人差があります。暑熱環境での運動は熱中症の危険を伴います。無理をせず、こまめな水分補給と体調管理を最優先にし、体調に異変を感じたらすぐに運動を中止してください。