「体が大きくならへんから、プロテイン飲んだほうがいいですか」
現場でいちばんよく聞かれる質問のひとつです。そしてだいたいの場合、答えは「その前に見るところがある」です。
先に結論だけ知りたい人へ
体が大きくならへんとき、足りてないのは
たんぱく質やなくてエネルギーです。
研究では、この年代の選手はたんぱく質を必要量の2〜3倍とっているのが普通でした。足りていないのは、たいていご飯の量です。プロテインを買っても、そこは埋まりません。
ただし、プロテインが役に立つ場面はあります。そこは後半にはっきり書きます。まず「なぜ基本は要らんのか」からです。
足りてないのは、たぶんプロテインやない
プロテインを買おうとしている時点で、頭の中はこうなっていると思います。
体が大きくならへん → 筋肉が増えてない → たんぱく質が足りてない
この3つ目が、たいてい違います。
筋肉が増えるには、たんぱく質だけでは足りません。材料(たんぱく質)と、それを組み立てるためのエネルギー(主にご飯)の両方が要ります。
エネルギーが足りていないと、体は食べたたんぱく質をエネルギーとして燃やしてしまいます。材料として使われません。
だから、こうなります。ご飯が足りていない状態でプロテインを足しても、そのプロテインも燃やされて終わりです。お金を使って、何も変わらない。現場で何度も見てきた形です。
では、実際にたんぱく質は足りていないのか。数字で見ます。
必要量と、実際にとっている量
成長期のアスリートの栄養をまとめたレビュー(Everett, 2025, Nutrients)に、はっきりした数字が出ています。
| 量 | |
|---|---|
| 1日に必要な量 | 体重1kgあたり1.4〜2.0g |
| 運動後に1回でとる量 | 体重1kgあたり0.25〜0.30g |
| 実際にとっている量 | 必要量の2〜3倍のことが多い |
体重60kgの選手なら、1日に必要なのは84〜120gです。感覚がつかみにくいと思うので、食べ物で出します。
- ご飯 茶碗1杯(150g)——約4g
- 卵 1個——約6g
- 牛乳 コップ1杯(200ml)——約7g
- 鶏むね肉 100g——約23g
- 納豆 1パック——約8g
肉か魚を1日2回食べて、卵と牛乳と納豆が入っていれば、それだけで80g前後になります。そこにご飯のぶんが足されます。
レビューの結論も同じで、「ほとんどの選手はバランスの取れた食事でたんぱく質の必要量を満たせる」と書かれています。プロテインは「必要なもの」ではなく「便利なもの」という位置づけです。
この研究の限界も書いておきます。これはナラティブレビューといって、複数の研究を著者がまとめて解説したものです。実験そのものではありません。また著者自身が「既存のガイドラインの多くは大人のデータをもとにしている」と書いています。数字は目安として見てください。
「体が大きくならへん」の正体
じゃあ何が足りてないのか。同じレビューに、そこも書いてあります。
エネルギー不足(利用可能エネルギーの低下)です。研究によっては、必要なエネルギーの60%しか食べていない選手がいたと報告されています。
そして、この状態が続くとどうなるか。レビューが挙げているのはこれです。
エネルギー不足が続いたときに報告されていること
- 成長・発育の遅れ
- 骨が十分に育たない(骨密度が低い)
- 月経の異常(女子選手)
- 食行動の乱れ
男子でも同じことが起きます。レビューでは、男子高校生のトップレベル選手で骨密度が低く、骨の育ち方が十分でなかったという追跡研究が紹介されています。
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
「体が大きくならへん」と言ってプロテインを買う選手の多くは、そもそも食べる量が足りていません。たんぱく質は2〜3倍とれている。足りていないのはご飯。買うものが違います。
しかも、エネルギー不足は体を大きくできないだけでは終わりません。骨が育たないという話です。疲労骨折のリスクに直結します。
先に見るのは、ここです。1ヶ月前と比べて、ご飯の量が減っていないか。朝を抜いていないか。練習がきつい時期ほど食欲は落ちて、いちばん減らしたらあかんご飯から減っていきます。詳しくはサッカー選手の食事の基本と補食のとり方に書きました。
ひとつ、混ぜないでほしいところがあります。これは「エネルギー不足が成長に影響すると報告されている」という話です。食べる量を増やせば体格が変わる、という意味ではありません。足りていない状態を埋める、それだけの話です。
IOCがプロテインをどう位置づけているか
もうひとつ、国際的な合意文書を見ておきます。IOCの合意声明(Maughan ら, 2018, IJSNEM)です。
おもしろいのが、この文書でプロテインは「サプリメント」ではなく「スポーツフード(食品)」に分類されていることです。そして用途として挙げられているのが、これです。
| 用途 |
|---|
| 大事な練習・試合のあとの回復 |
| 成長期や筋トレでの、除脂肪量(筋肉など)の増加 |
| 忙しいとき・移動中の、持ち運べる栄養 |
3つ目に注目してください。「持ち運べる栄養」です。つまり食事の代わりとして使うものであって、食事に上乗せする特別な何か、とは書かれていません。
そして同じ文書には、サプリメントは「スポーツ栄養として食事が足りていることを確認したうえで」検討すべきものという趣旨のことが書かれています。順番が決まっています。食事が先です。
それでも、要る場面はある
ここまで「基本は要らん」と書いてきましたが、要る場面はあります。共通しているのは1つだけです。
食事が物理的に入らないとき。
| 場面 | なぜ |
|---|---|
| 移動中・遠征 | 食事の時間と場所が確保できない |
| 練習が連続する日 | あいだに固形物を入れると次に響く |
| もともと食が細い | 量を食べられない。液体のほうが入る |
| 練習直後に食事まで時間が空く | 帰宅が遅く、食事が2〜3時間後になる |
どれも「たんぱく質が足りない」やなくて「食事が入らない」という理由です。ここが分かれ目です。
逆に、3食きちんと食べられていて、それでも体が大きくならへんという場合。そのときに足すべきなのは、たいていプロテインではなくご飯と補食です。おにぎり、バナナ、牛乳。そのほうが安く済みますし、エネルギーも一緒に入ります。
「何歳から飲んでいいか」という質問もよく受けます。年齢で線を引いた明確な基準は、僕が調べたかぎり見つかりませんでした。年齢より「3食が入っているかどうか」で判断するほうが、現実的だと思っています。
買うなら、見るところ
それでも買う、となったときに見るところです。味と値段は最後でいいです。
| 見るところ | 理由 |
|---|---|
| ① アンチ・ドーピングの第三者認証 | 競技をしているなら、ここが最優先。詳しくは下の記事に書きました |
| ② 1回あたりのたんぱく質量 | 体重1kgあたり0.25〜0.30gが目安。体重60kgなら15〜18g |
| ③ 余計なものが入っていないか | 成分が増えるほど、汚染のリスクが上がる(IOC声明) |
| ④ 買う場所 | 素性の分からない通販は避ける |
①の認証については、別の記事に詳しく書いています。どの認証があって、どこまで見ればいいのかは、そちらを読んでください。
知っておいてほしいリスク
最後に、あまり書かれていないところです。
1つ目。市販のプロテインから、鉛やカドミウムが検出されたという報告があります。さきほどのレビュー(Everett, 2025)に書かれています。とくに素性の分からない通販での購入は、汚染物質にあたるリスクが上がると指摘されています。
2つ目。ドーピングです。IOCの合意声明には、こう書かれています。
第三者認証について、IOC合意声明が書いていること
第三者による監査は、禁止物質が含まれるリスクが「低い」製品を見分けるのに役立つ。ただし、どの製品も完全に安全だと保証することはできない。それでもこうした仕組みは、選手がリスクを管理する助けになる。
「認証があるから絶対に大丈夫」ではありません。リスクを下げる手段であって、ゼロにする手段ではない。ここは正確に知っておいてください。
同じ文書には、ごくわずかな量の禁止物質——体に何の作用もしないレベル——でも、検査で陽性になりうるとも書かれています。効果がない量で、競技人生が終わることがあります。
そのうえで、IOCは選手に「わずかな上積みが、汚染によるうっかりドーピングのリスクに見合うかどうか、慎重に検討すること」を求めています。
逆に言えば、これがこの記事の結論です。3食で足りているなら、わざわざリスクを取る理由がありません。食事で埋まらない穴があるときだけ、認証のあるものを選んで使う。それだけです。
まとめ
- 体が大きくならへんとき、足りてないのはたんぱく質やなくてエネルギー
- この年代の選手は、たんぱく質を必要量の2〜3倍とっているのが普通
- 必要量は体重1kgあたり1.4〜2.0g。肉・魚・卵・牛乳・納豆が入っていれば届く
- エネルギー不足が続くと、成長の遅れや骨が十分に育たないことが報告されている
- IOCの文書でも、プロテインは「持ち運べる栄養」という位置づけ。食事が先
- 要るのは食事が物理的に入らないとき(移動・連続練習・食が細い・帰宅が遅い)
- 買うなら認証 → 1回のたんぱく質量 → 余計なものがないかの順で見る
- 認証があっても「絶対安全」はない。要らないなら、リスクを取らないのがいちばん
この記事で参照した資料
- Optimizing Performance Nutrition for Adolescent Athletes: A Review of Dietary Needs, Risks, and Practical Strategies(Everett, Nutrients, 2025) — ナラティブレビュー。たんぱく質は体重1kgあたり1.4〜2.0g/日、運動後は0.25〜0.30g/kg。この年代の選手は必要量の2〜3倍を摂取していることが多く、補助食品なしで満たせるとしている。一部の市販プロテインから鉛・カドミウムが検出された報告、利用可能エネルギー不足による成長・骨への影響にも言及。著者は「既存のガイドラインの多くは大人のデータに基づく」ことを課題として挙げている
- IOC Consensus Statement: Dietary Supplements and the High-Performance Athlete(Maughan ら, IJSNEM, 2018) — プロテインは「スポーツフード」に分類され、用途として運動後の回復、除脂肪量の増加、忙しいとき・移動中の持ち運べる栄養が挙げられている。成分が増えるほど汚染リスクが上がることにも言及。第三者認証については「どの製品も完全に安全とは保証できないが、リスク管理の助けになる」としている
※ 本記事は一般的な情報提供であり、特定の製品の効果を示すものではありません。必要な量は競技・年齢・体格・練習量によって変わります。持病がある方、食事について不安がある方は、医師や公認スポーツ栄養士にご相談ください。
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食べているのに、体が変わらない選手へ
食事の量を増やしているのに体重が増えない、疲れが抜けない、同じところを繰り返し痛める。そういうときは、食べている量そのものではなく、練習量とのつり合いが取れていないことがあります。S.T.R鍼灸院では、体の状態を確認したうえで、練習・食事・睡眠のどこから手をつけるかを一緒に決めます。お気軽にご相談ください。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。効果には個人差があります。体重が増えない、月経が止まっている、疲労骨折を繰り返すなどの場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。