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「朝起きたら、なんか痛いんですよ」
練習前に、こう言ってくる選手がいます。どこかを強くぶつけたわけでも、練習で痛めたわけでもない。でも朝起きると、首や腰がなんとなく痛い。
この「なんか痛い」は、放っておかれがちです。そして多くの人が、まず寝具を疑います。寝具のせいのこともあります。でも、寝具のせいじゃないこともあります。この記事は、そこを自分で見分けるための話です。
先に結論だけ知りたい人へ
朝の「なんか痛い」は、首なら枕、腰ならマットレスと姿勢を疑います。
見分ける手がかりは「いつ痛いか」です。
朝がいちばん痛くて動くとマシになるなら、寝ている環境。昼間も同じように痛いなら、姿勢や体の使い方。寝具を変えるなら、まずお金のかからない方法で試してからにしてください。
朝の「なんか痛い」は、首と腰が多い
現役トレーナーの視点朝に「なんか痛い」と言ってくる選手は、腰と首が多い。もともと姿勢が悪い選手もいる。首は、枕が原因のことがけっこうある。
首と腰が多いのには、理由があります。寝ているあいだ、体重がいちばん長くかかり続ける場所だからです。
首は、枕の高さが合っていないと、何時間も曲がったまま、あるいは反ったままになります。腰は、マットレスが柔らかすぎると沈み、硬すぎると浮いて、どちらも同じ姿勢で負担がかかり続けます。8時間同じ形でいれば、朝に痛くなっても不思議ではありません。
ただ、もともと姿勢が悪い選手は、寝具を変えても痛みが残ることがあります。寝ているあいだだけでなく、起きているあいだも首や腰に負担がかかっているからです。
マットレスは、正直よく分からない
現役トレーナーの視点ただ、マットレスは選手の家で実際に見られるわけではない。だから正直、よく分からないというのが本音。
枕は持ってきてもらえば見られます。でもマットレスは、選手が家でどんなものに、どんな姿勢で寝ているかを、こちらは見られません。
だからこそ、選手が自分で見分けられるようにしておくことが大事だと思っています。見分け方は、次の表のとおりです。
| こういう痛み方 | まず疑うところ |
|---|---|
| 朝がいちばん痛い 動き出すとマシになる | 寝ている環境 (首なら枕、腰ならマットレス) |
| 昼間も同じように痛い 座っている・立っているだけでも痛い | 姿勢・体の使い方 (寝具を変えても変わりにくい) |
| 練習で動いたときに痛い | 動き方・練習量 (寝具とは別の話) |
いちばん上に当てはまるなら、寝具を見直す意味があります。真ん中や下なら、寝具にお金をかける前に、姿勢や動きを見てもらったほうが早いです。
寝具で変わることは、研究でもある
寝具を変えると、本当に朝の痛みが変わるのか。これを調べた研究があります。
Jacobson ら(2008, Applied Ergonomics)は、健康な大人を対象に、いつもの自分の寝具で28日間、そのあと新しい中くらいの硬さの寝具で28日間寝てもらい、腰や肩の痛みと睡眠の質を毎日記録してもらいました。
結果、新しい寝具に変えたほうが、腰の痛みや睡眠の質の一部が良くなっていました。参加者がもともと使っていた寝具は、平均で9年以上使われたものでした。
この研究の限界も書いておきます。対象はスポーツ選手ではなく一般の大人で、人数も多くありません。また、「新しくした」こと自体の影響と、「中くらいの硬さにした」ことの影響を、きれいには分けられていません。マットレスの種類による違いについては、研究どうしで結論がそろっていない、という報告もあります(2021年の系統的レビュー)。
それでも、長く使ってへたった寝具を変えると、朝の体が変わることはある。ここまでは言えると思います。
寝不足だと、痛みを感じやすくなる
もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。痛みと睡眠は、お互いに影響し合うということです。
睡眠と痛みの研究をまとめたFinan ら(2013, The Journal of Pain)の総説では、睡眠が足りないと痛みに敏感になることが、実験でくり返し確かめられているとされています。逆に、痛みがあると眠りも浅くなります。
つまり、寝具が合わない → 眠りが浅い → 痛みに敏感になる → さらに眠れない、という悪い流れが起きることがあります。朝の「なんか痛い」を放っておかないほうがいいのは、このためです。
そして睡眠そのものも、選手にとって大事です。睡眠が8時間未満の選手は、怪我が約1.7倍多かったという研究もあります(くわしくは寝不足の選手は怪我が増えるに書いています)。睡眠の質を上げることは、パフォーマンスにも、怪我を減らすことにもつながると考えています。
寝具を変える前に、お金のかからない方法で試す
寝具を疑うなら、いきなり買い替えなくていいです。まず、お金のかからない方法で確かめてください。
| 痛いところ | まず試すこと |
|---|---|
| 首 | バスタオルを折りたたんで、枕の代わりにする。高さを1枚ずつ変えて、朝の首が楽になる高さを探す |
| 腰 | 仰向けで腰の下に手を入れてみる。すき間が大きすぎる(硬すぎ)か、手が入らない(柔らかすぎ)かを確認する |
首のほうは、枕は買う前にバスタオルで試すに、やり方をくわしく書いています。高さが分かったあとに枕を選ぶなら高さを変えられる枕の選び方を見てください。
タオルで高さが分かったら
枕は、買ったあとに高さを変えられるものを選ぶ。
モットン 高反発まくらを見るまず安く試したいなら GOKUMIN ミルフィーユピロー。中のシートを抜き差しして高さを変えられます。
腰のほうで、朝いちばん痛くて動くとマシになるなら、朝いちばん腰が痛い人へに、マットレスの硬さの見分け方を書いています。
マットレスを買い替えるなら、「試せるもの」
それでもマットレスを買い替えるなら、条件はひとつです。家で何日か寝て、合わなければ返せるものを選ぶ。
さっき書いたとおり、マットレスはこちらからは見られないし、店で5分寝ても分からないものです。分かるのは、実際に家で何日も寝た本人だけです。だから「試せるかどうか」で選ぶのが、いちばん失敗しにくいと思っています。
研究でも、新しい寝具に変えてから1週目より4週目のほうが良くなっていたと報告されています。数日で決めず、2週間くらいは寝てみてください。
▶ サッカー選手はマットレスをどう選んでいるか|スペックより「試せるか」
現場で選手から名前が挙がるマットレスの、お試し期間と返品条件を一覧にしています。
こういうときは、寝具より先に診てもらう
- 朝だけでなく、一日中痛い
- しびれがある、手や足に痛みが走る
- 寝具を変えて2週間以上たっても、まったく変わらない
- 痛みがだんだん強くなっている
どれかに当てはまるなら、寝具の問題ではないかもしれません。我慢して寝具を買い替え続けるより、一度医療機関で診てもらってください。
まとめ
- 朝の「なんか痛い」は首と腰が多い。首は枕のことがけっこうある
- もともと姿勢が悪いと、寝具を変えても残ることがある
- 見分ける手がかりは「いつ痛いか」。朝がいちばんなら寝具、昼間も同じなら姿勢
- マットレスはこちらからは見られない。だから自分で見分けられるようにしておく
- 古い寝具を新しくすると、腰の痛みや睡眠の質が良くなった研究がある
- 寝不足だと痛みに敏感になる。痛みと睡眠はお互いに影響し合う
- 寝具を疑うなら、まずお金のかからない方法で試す。買うなら試せるもの
この記事で参照した研究
- Grouped comparisons of sleep quality for new and personal bedding systems(Jacobson ら, Applied Ergonomics, 2008) — 健康な成人が、自分の寝具で28日、新しい中くらいの硬さの寝具で28日寝て、腰・肩の痛みと睡眠の質を記録。新しい寝具で睡眠の一部の指標が有意に改善。もともとの寝具は平均9.5年使用
- マットレスと睡眠・腰痛に関する系統的レビュー(Journal of Orthopaedics and Traumatology, 2021) — 新しいマットレスでの改善は1週目から4週目にかけて進んだ研究があること、マットレスの種類による違いについては結論がそろっていないことを報告
- The association of sleep and pain: an update and a path forward(Finan ら, The Journal of Pain, 2013) — 睡眠と痛みはお互いに影響し合うこと、実験的な睡眠不足で痛みに敏感になることを整理した総説
※ 研究の結果がすべての人に当てはまるわけではありません。寝具の合う・合わないには個人差があります。
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朝の痛みが、なかなか取れない人へ
寝具を見直しても、朝の首や腰の痛みが変わらない。その場合、原因は寝具ではなく、日中の姿勢や体の使い方にあることがあります。S.T.R鍼灸院では、痛みのある場所だけでなく、姿勢や動きを見たうえで、どこに負担がかかっているのかを一緒に探します。お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちらS.T.R鍼灸院(大阪・福島区)
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。痛みが強い、しびれがある、痛みが続くなどの場合は、医療機関を受診してください。